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折りたたみ北京


 
(引用開始)

折りたたみ式の街は
三つのスペースに分かれている。
片面は第一スペースで、人口は五百 万人。
彼らに割り当てられた時間は、
午前六時から翌朝六時まで。
その後、第一スペースは眠りにつき、
地面が回転する。
裏面は第二スペースと第三スペースだ。
第二スペースの人口は二千五百万人で、
割り当てられた時間は
二日目の午前六時から午後十時まで。
第三スペースには五千万人が暮らして いて、
午後十時から午前六時までの時間が割り当てられている。
そして第一スペースに戻る。
時間は慎重に分配され、
各スペースの人々を完全に分離している。
五百万人が二十四時間を享受し、
七千五百万人が次の二十四時間を享受するのだ。

(引用終了)


冒頭に、中国系アメリカ人の
SF小説家・翻訳家である
ケン・リュウが編集した
折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー
(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
に収録されている、
郝景芳(ハオ・ジンファン)の
短編SFディストピア経済小説
「折りたたみ北京」からの
引用をさせていただきました。

通常は、小説の引用をするのは
反則だとは思いますが、
北京という街が
物理的に折りたたまれて使われている
という様を感じてもらうには、
そのまま読んでいただくのが一番いいと思ったので、
あえて禁を犯させていただきました。

(もちろん、オチは別にちゃんとありますので、
そういう意味ではネタバレはしていないと思います。
ぜひ、ご購入いただいてお読みください。)


この作品は2014年に
中国において発表されたもので、
2015年に英語に翻訳されています。
本書の日本語での出版が2018年なのですが、
中国では数多くの優秀なSF作家が
旺盛に意欲作を発表しているようですが、
それが英語に翻訳される割合は
決して多くないということです。
ましてや日本語になったものを探すのは
かなり難しいのが現状かもしれません。
英語版は、ヒューゴ賞という
SF小説の分野における
世界で一番権威のある賞のひとつを
受賞している話題作です。
作者の郝景芳は
以下のような経歴をお持ちのようです。



(引用開始)

郝景芳は数冊の長篇と旅行エッセイの著者で、
また〈科幻世界〉や〈萌芽〉、
〈新科幻〉、〈文芸風賞〉などの各誌で
多くの短篇を発表している。
彼女の作品は銀河賞や科幻星雲賞を受賞している。
学部生として清華大学で物理学を専攻した後、
清華大学の天体物理センターで院生として研究を行った。
最近では清華大学で経済学と経営学の博士号を取得し、
現在シンクタンクに勤務している。

(引用終了)


 清華大学(習近平主席の出身大学)という
中国というかアジアでトップクラスの大学で
物理を学び、その上
経済学と経営学の博士号を
同大学で取得しているという才媛で、
こんな創造力豊かなディストピア小説を
書ける人材がいるのに、
隣の日本では
ほとんど話題にもならないのは不思議ですね。

私も、中国のAI(人工知能)のことが書かれている
李開復(リー・カイフー)著
AI世界秩序: 米中が支配する「雇用なき未来」
(日経BP)
に紹介されていたので存在を知りましたが、
中国のことに関しては
まだまだ知らないことばかりだと思い知らされました。


 ちなみに李開復博士は
アメリカの大学で博士号を取得している
台湾出身の世界的なAIの権威で、
2017年に中国の囲碁のトップ棋士が
アルファ碁というAIに完敗した事件は、
中国人にとって、
スプートニク・ショック
(1957(昭和32)年に
ソ連が人類初の人工衛星
「スプートニク1号」の打ち上げに成功して、
西側諸国に
宇宙開発でソ連に遅れていることを
見せつけた出来事。
これで、アポロ計画が始まり
1969(昭和44)年の
アポロ11号による月面着陸の偉業に
つながったと言われている)
にも匹敵するショックを与えたと言います。

それから、官民をあげての
AIの開発競争に取り組むようになり、
いまではアメリカをも凌駕する
AI大国になっていることを
分かりやすく教えてくれる名著です。


 AIの発展は止められないと考えています。
「折りたたみ北京」や「AI世界秩序」が
提示しているのは、
AI化が進むと雇用が失われ、
近未来には失業が大きな社会問題になるのは
必然だということです。
欧米人の書かれた英語での出版物は
日本にも積極的に紹介されていますが、
実は中国の方が
はるかに進んでいる分野もたくさんあるようで、
DX(デジタル・トランスフォーメーション)化を
進める上でも、
もっとも見習うべきなのは
中国の動きになるようです。


 フィクションという分野においてすら
日本をはるかに凌駕する境地に達している
可能性はかなり高く、
ここは謙虚に学ぶ姿勢を持つことも大事なようです。
幸いにも、最近は
多くの中国語で書かれたものが
日本語に翻訳されるようになってきました。
まだまだ一旦は英語になったものからの
翻訳が多いようですが、
中国語からの直接の翻訳体制が
進むような取り組みが待たれます。

日本は海外の文化や文明をうまく取り入れて、
それを日本化するのが得意です。
ここは、遅れてしまっていることを
謙虚に受け止めて
学ばせてもらうことが大切なような気がします。
 



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