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いまどきの人情話


 志賀内泰弘さんという作家の先生がいます。
元々は「しがないサラリーマン」だからと
付けられたペンネームの志賀内さんですが、
15年前に独立されたころから
「プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動」を始められて、
ちょっとしたいい話を集められる運動などを
展開されています。

サラリーマンでお勤めの時から
作家として食べていけるようになることを
目指しておられたのですが、
久しぶりに本を読ませていただいて
志賀内さんならではの
境地ができていることを確信しました。


 もちろん、私に
小説が分かるわけではありませんので
素人のたわごとですが、
いまどきべたべたの人情話なのに、
しっかりとお話しの世界に感情移入させられて、
涙まで流させます。
志賀内さんにしか書けない世界を
築き上げられたのは、
とてもすごいことだと思います。
私が読ませていただいたのは、
京都祇園もも吉庵のあまから帖
(PHP学芸文庫)です。
PHP誌に連載されているものに
書き下ろしを加えて、
いまの所3冊出版されています。


 祇園のナンバー1芸妓だった母娘がいて、
母は芸妓を引退後
お茶屋の女将をしていたが
ある日、娘の踊りについての言い合いで
娘が芸妓をやめて
タクシードライバーになってしまいました。
それを機に母はお茶屋をやめて、
看板もない顔なじみのお客様だけを相手にする
甘味処をやり始めて、
みんなの相談事にのっているという設定です。

あり得ない設定なのですが、
それを押し通してシリーズ化すると
登場人物がイキイキと動きだして
令和の京都ではなく、
昭和の京都にタイムスリップして
そんな世界を楽しめるのが魅力です。


 そう言えば、私は
江戸時代を舞台にした
時代小説が大好きです。
仕事やプライベートも含めて
本当に上手く行かなかった時期がありました。
その時は、本も読めなくなったのですが、
そんな状態の時の唯一の娯楽が
池波正太郎先生の時代小説でした。
「鬼平犯科帳」や「剣客商売」、
それに「仕掛人・藤枝梅安」のシリーズを
あっという間に読破して、
何度も読み返したのを覚えています。

そんな話を
結構人情に厚い先輩に話すと
佐伯泰英先生のシリーズのことを教えていただき、
こちらもかなりの本を読みました。


 昭和の時代に書かれた
池波先生の時代小説は
一応、時代考証のようなものがなされていて、
登場する人物名なども
ありそうな設定がなされていましたが、
大体、日本刀は
人を数人切ると歯がこぼれてしまって
使えなくなってしまうのに、
時代劇のように一人で何十人も
バッタバッタと切り倒すこと等、
初めからあり得ない設定になっているそうです。

さらに、佐伯先生の
平成から現代にかけて書かれた時代劇になると、
いま風の名前の主人公が登場し、
時代考証などにこだわるよりも
感情移入することに
力点が置かれているという話しを
詳しい方から教えていただいたことがあります。


 志賀内さんの「もも吉庵」の場合、
京都人でもない志賀内さんが
こんなにいい話をかけるのは、
しっかりと取材をされる力もありますが、
どちらかというと
昭和とは言いませんが、
現代と昭和のミックスのような
架空の京都を舞台にしていて、
京都ならそんなこともあり得るなと
思わせる所に味噌があるのかもしれません。

志賀内さんだけではなく、
この分野に何人かの書き手が現れたら
京都を舞台にした時代ミックス娯楽小説という
新しい分野ができたりして、
おもしろいのかなと感じました。


 志賀内さんは独立する前は
金融機関にお勤めのサラリーマンでした。
ちょっとだけその時代のお話を
聞いたことがあるのですが、
金融機関は会社がつぶれるときにも関与するので、
つぶれないようにするためのコンサルティングや、
あえていってしまうと
如何にうまくつぶれるためのコンサルティングなども
ご商売としてやっているかどうかはともかくとして
実績があるそうです。

だから、あんなに人情の機微に通じているのだなと
理解できたことがありました。


 先日、京都駅からタクシーに乗ったら
個人タクシーで、
しかも女性の運転手さんでした。
私は結構
タクシーに乗せていただく機会は
多い方だと思いますが、
個人タクシーで女性ドライバー
という組み合わせは初めてで、
もしかしたら
「もも吉庵」の主人公のお一人である娘さんの
モデルなのかなとびっくりしました。
ちょっとお話を振ってみても、
小説をご存じないようでしたので、
違うのだと思いますし、
私が知らないだけで
そんなドライバーも、
いまではたくさんいるのかもしれません。


 そんなことがあった翌週に、
なんと久しぶりに
志賀内さんからお電話をいただきました。
別に用事はないのだけど、
私の顔がふと浮かんだからと
お電話をいただいたそうです。

やっぱり超一流の人は
直感力に優れているのだなと
改めて感心しました。
雑誌に連載されているものですし、
志賀内さん一流の優しさで、
最初から読み続けなくても、
どの話から読み始めても
ちゃんと読み切りで楽しめるようになっていますので、
気軽にお読みいただければと思います。

少なくとも、
京都に行って見たくなるのは
間違いないと思います。



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