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最後の通勤


 個人的なことで恐縮ですが、15年ほど続けてきたある上場会社の
社外役員を、今月下旬の株主総会をもって退任することになりました。

15年前、船井総研の仕事をしなくなり時間に余裕のできた私に、
この会社の前の社長が声をかけて社外役員にしてくれました。
当時の社外役員は取締役会に出席することが一番大事な仕事ぐらいの
感じで、頭数を揃えておくことが主な役割だったので、船井総研で
取締役の経験があるとはいうものの、まだまだ若輩者だった私でも
務めをこなすことができたのです。

 とはいえ、時間があったこともあり、日本全国の営業所やお店などを
訪ねては社員の皆さんのお話をいろいろ聞かせてもらいました。
そんな中で忘れられない思い出は、あるお店に対して「マーケティングの
観点から言えば、制約条件が多すぎてとても成功しないだろう」と
意見を述べたところ、それが現場の皆さんの反発心に火を点けたようで、
いまではその店舗は中型店のモデルケースにされるぐらい上手く行って
います。社外役員にはこんな役割もあるのだなと、逆説的ですが
ちょっと誇りに思っているエピソードです。

 この会社は真面目な会社で、取締役会は8時30分から始まります。
10分前に部長以上の幹部朝礼があるので、私たち社外役員も8時前後
には出社することになります。コンサルタントはどうしても夜型の
仕事になることもあり、船井総研や船井本社は9時30分の始業です。
だから、大体月に一度の割合でいつもより早起きしてかなり空いている
通勤電車に乗ることになりますが、今日はコロナ君のおかげでいつも
にも増してとても空いていて、ゆっくり座ることができ、おかげさまで
こうして原稿を書くことができています。

 昭和の時代の感覚かもしれませんが、朝が早い会社は儲かっている
会社です。この会社も一般の社員は9時からの始業ですが、役員や
幹部の人たちは相当早く出勤しているようです。特に管理系の歴代の
専務や常務は大体始発電車に乗って通勤していて、6時前には会社に
着いて、その会社のナンバー2が毎日の鍵を開けるという習慣が
あります。こんな真面目ないい会社だから、こんないい加減な私でも
15年間大役を務めさせていただけたのかもしれません。


 朝が早いというとまず連想するのが証券会社です。私が社会人に
なったころは証券会社の人は7時前には出勤していたものです。
早朝に出社して海外のマーケットの情報を頭に入れておくことが
必須だというのが表向きの理由でした。

でも実際のところは、昔の証券会社は生き残れば偉くなる、逆に言うと
生き残りが大変な業界なので、体育会系の特質が存分に発揮されていた
からこその早朝出勤だったのだと思います。最近は働き方改革の影響と
テクノロジーの進化で、会社に行かなくても例えばスマホ等で十分な
情報を取れるので普通の通勤で十分なのかもしれません。

 さらに、コロナ禍で証券会社の花形であるトレーディング部門の
人たちも在宅勤務を強いられているのですが、意外に在宅勤務でも
効率は落ちないし、都心の一等地に大きなオフィスを構える費用や
通勤の時間などを考えると、コロナ禍が収束しても元に戻ることは
ないだろうという日経新聞の記事がありました。そんなことを考えると、
コロナというのは絶妙のタイミングで私たちのところにやってきていて、
例えば5年前ならこんな対応はとてもできなかったということが
感じられます。

 頭数合わせだった上場企業の社外役員も、いまでは大きな責任を
伴うものになりました。これも40歳代前半の15年前の若輩者の私では
とても務めきれない役割ですが、おかげさまでずいぶん図太くなった
いまの私にとってはとてもやりがいのある仕事でした。会社の改革に
多少はお役に立ったのではないかなと自負していますが、15年は
いかにも長いし、ちょうどいい後任が見つかったようなので、この
タイミングで退任させていただくことになりました。

 この時間に電車に乗るのも最後になるかもしれません。ちょうど
通勤路が証券会社が集まっている街を通るので、昔よりは通勤時間が
遅くなったとはいえ、それでも普通の会社に比べればかなり早い
一見して証券会社にお勤めだなという人がいつもは多いのですが、
今日はガラガラです。緊急事態宣言は解除されても東京アラートが
出ていることもあり、大手企業はやはり在宅勤務の流れが当分続く
ようです。

 証券街を過ぎると、今度は繊維問屋界に電車は入っていきます。
こちらは長期的に低迷している業界なのですが、年配の方を中心に
やはり朝の早い人はいるようで、いつもなら電車が空いてホッとする
ところですが逆に人の数が増えたようです。大手企業のように
なかなか在宅勤務というわけにはいかないのかもしれませんが、
働き方が大きく変わる人と、徐々に変わっていく人の違いはあるかも
しれませんが、どちらにしても時代は大きく変化しているようです。

そんな様々なことを考えながら、今日は最後の通勤を存分に楽しませて
いただきました。日本経済の流れを感じられる貴重な体験が
できなくなってしまうのはちょっと寂しい気もしますが、私も新しく
できた時間を有効に楽しく使っていきたいと思っています。



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