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僕が地球にやって来たワケ 第10回

最近思うこと


 この冊子が皆様のお手元に届く頃には元号も変わり、ちょうど新緑の
爽やかな空気も相まって、日本全体が気分も新たに動き始めていること
でしょう。

 「令和」という元号については、2人の学者の先生の正反対の解釈が
面白く、興味深く拝読しました。1人目は、元号を考案されたと噂の
国際日本文化研究センター名誉教授 中西進先生です。「令和」の漢字
2文字は、『万葉集』の巻第五の中に歌われている梅の花を歌った32首
の序に使われていますが、中西先生は、昭和59年の著書『萬葉集 全訳注
原文付』の中で次のように訳しています。
「時あたかも新春の好き月、空気は美しく風はやわらかに、
梅は美女の鏡の前に装う白粉(おしろい)のごとく白く咲き、
蘭は身を飾った香の如きかおりをただよわせている」

 中西先生は、「令(うるわ)しく平和に生きる日本人の原点です」との
コメントを出していますが、もう一方で、東京大学教授の品田悦一
(よしかず)先生は、「新しい年号が『令和』と定まりました。典拠の
文脈を精読すると、〈権力者の横暴を許せないし、忘れることもできない〉
という、おそらく政府関係者には思いも寄らなかったメッセージが読み
解けてきます」
となかなか刺激的な緊急寄稿をされています。品田先生は日本の古代文学
の研究者で、万葉集の専門家です。前述の寄稿は、精読と考察に字数を
割いた丁寧な長文なので、ここでは引用を割愛しますが、インターネット
で品田先生のお名前と新元号を組み合わせて検索していただくと、すぐに
エッセイのテキスト全文が出てきますので、ご関心のある方はそちらで
ぜひお読みください。私は中西先生の解釈に確かなものを見つつ、
品田先生の知性に裏打ちされた独特の感性にも、共感できるところが
あるような気がしています。

蠱惑(こわく)的な夜桜の下で


 お話は変わりますが、4月の頭に毎年、夜桜能が開催されています。
会場は靖國神社能楽堂です。3日にわたり、東京最古の木造能楽堂で
夜桜を楽しみながら能を楽しむという趣向で、今年で27回目になる
老舗の行事です。2019年の日程は4月2日〜4日で、午後6時半の
開始でした。

 梅若実さんの能、野村万作さん、萬斎さんの狂言など伝統芸能が好き
な人も、そうでない人も心そそられる演目が並びます。毎年1000席
ほどのチケットがすぐに売り切れるようです。ただ、雨天の場合は、
都内の劇場に場所を移して上演されると決まっていて、この時期の雨は
案外多く、当日晴れて能楽堂での開催が決行されても、途中から雨模様
になると雨合羽が配られるそうで、これもまた風情がないので、かなり
お天気に一喜一憂するイベントです。

 最初に火入れ式というセレモニーがあります。神前から移した御神火を
分けて、松明(たいまつ)に火をつける「火入れ式」です。こちらの
火入れは、毎年著名人やスポンサー企業から選出された「火入れ奉行」が
務めますが、今年は私が拝命されるという名誉に与りました。開演時間に
なると、照明が全部落ちて、舞台も客席も、一瞬にしてさっと漆黒の暗闇
に包まれます。4人の火入れ奉行が裃(かみしも)姿で松明を携えて
登場し、本舞台の左右に設置された薪に御神火を灯します。私は学者の
宮台真司先生と田中研之輔先生、それにタリーズコーヒージャパン創業者
で元政治家の松田公太先生とご一緒させていただきました。その日の
湿度や温度、風の向きによっては、なかなか点火しなかったり、激しく
大きい火になり過ぎるような話を聞いていましたので、せっかくの機会、
どうせなら美しい火を灯してみたいと、珍しく少し緊張しながら、気合を
入れて臨みました。

 厳粛な気持ちになる、という瞬間は、人生でそんなにないものです。
冠婚葬祭や、はたまた大きい仕事などでは、責任感や当事者意識が入って
くるもので、「厳粛」というゾーンに入ったことは、ほとんどない気が
します。

 もちろん今回も、誠実な気持ちで奉行をさせていただきましたが、
本当に時空ごとタイムトリップした気持ちを味わいました。普段、精神
世界や物理学のプロの方と接していて、一般の方よりは次元上昇の実感
とか、時には空間移動だとか、日常生活ではあり得ない世界を見ることが
あるのですが、今回感じたものはもっと深く自分の内面にアプローチする
世界でした。

「恋の重荷(おもに)」


 先ほど書いた火入れの儀式の後は、格調高い薪能(たきぎのう)が
上演されます。ライトアップされた夜桜のもと、かがり火に浮かぶ
能舞台で当代一の能楽師が舞うさまは、まさしく幽玄の世界といえます。
私は能を劇場でしか観たことがありませんでしたが、アテンドしてくだ
さった方によると、もともと能は野外で行うのが通常でしたから、薪を
焚く野外での能演は一般的なことではあるそうです。 梅若実さんの
「恋重荷」という演目が、心に残りました。極めて簡単にあらすじを
書きますと、舞台は菊を愛好する白河院の庭、菊の世話をする山科の
荘司という者がいました。荘司は白河院の女御(にょうご)の姿を見て、
恋心を抱きます。その想いを知った女御は、使者を通じて、ある課題を
クリアしたら私の姿を見せてあげましょうと荘司に伝えます。それは
指定の荷物を持つこと。普段から重労働に慣れている彼は自信たっぷり
に挑戦しますが、びっくりするほど重い荷は持ち上がらず、失敗した
彼は恨みを胸に自死を遂げます。最初は霊となって女御を苦しめようと
しますが、途中から彼女の想いの深さから守護神に変身するといった
ようなお話でした。現代の風潮だと、さらっとした距離感が好まれ、
何かにつけて重いのは嫌われますが、人の想いの深さというのは軽重
ではないのだと、心に響く物語でした。


戦争歌の歌詞に隠れた想い


 「同期の桜」という歌、どのくらいの読者の方がご存じでしょうか。
有名な海軍挽歌ですが、1番の歌詞「貴様と俺とは同期の桜 同じ
兵学校の庭に咲く 咲いた花なら散るのは覚悟 みごと散りましょ
国のため」は覚えていらっしゃる方も多いでしょう。私は夜桜能の空間で、
最終5番の歌詞を、記憶の底から思い出し、涙が止まらなくなりました。
その歌詞とはこうです。「貴様と俺とは同期の桜 離れ離れに散ろうとも 
花の都の靖国神社 春の梢に咲いて会おう」筆舌に尽くし難い葛藤の上に
ある強い心の絆が伝わってきます。軍隊の同じ釜の飯を食べた同期、明日
にはそれぞれが任務の地に赴き、国のため命を懸けて散る前提で戦う......。
その前提で出会った仲間です。共に訓練を受けた同期にしか分からない悩み、
葛藤、不安。その気持ちを分かち合ったとて、すぐに離れ離れになる関係
です。だからこそ距離感も難しかったでしょうが、その頃の兵隊さんは、
「明治・大正生まれの男」。あの時代に生まれた人々の特有の意志の強さ。
決してぶれず、自分を見失わず、言動や行動は大げさに発散せずに、同期
の友を思う心が、前述の5番の歌詞になったと思うと、その尊さ、貴さに
肅然(しゅくぜん)とした想いを持ちました。

 そして、靖國神社の隣、遊就館に常設展として展示されていた中川
州男(くにお)陸軍中将(任期当時は大佐)の英霊のことを思い出し
ました。中川大佐はこのコラムでも取り上げさせていただいたことの
ある昭和19年、ペリリュー島をめぐる日米の戦闘の日本軍の指揮官
です。米軍が「2、3日で陥落させられる」と考えていた戦いは、
中川大佐の率いる日本軍の粘りで74日間にも及びました。最後は
割腹を遂げました。

 死闘のトップとは言え、中川大佐はとても穏やかな家庭人で、妻には
「永劫(えいごう)演習に行ってくる」とだけ伝えて任地に赴いたそう
です。「永劫演習」というのは、生きて帰還が望めない戦場のことです。
皆様にも機会があれば中川大佐の逸話を読んでいただきたく思いますが、
昨年ぺリリュー島で中川大佐のことをたくさん聞いた私は、この靖國
神社の桜の下に彼も眠っているのだと思うと、また涙がこみ上げてきま
した。

春の梢に咲いて会える


 今回のコラムは、読み方によってはかなり感傷的な内容になりました。

 この夜桜能以来、私は靖國神社に眠る、物言わぬ英霊を思うとき、
すっかり涙もろくなっています。「令和」から後、永遠に戦争が起こって
ほしくないと思う気持ちは、私の中で変わりません。しかし、今回靖國
神社で大事なお役目を果たさせていただき、これからの人生、命を投げ
打つことを厭わないくらい、真摯で果敢に生きてみようと。

そんなふうに命を燃やし尽くすように生きたなら、この桜の下に帰れ
るんだという厳粛な気持ちで国のために命を散らした英霊たちの思いが
多少なりとも分かるようになるのかなと感じています。

 靖國神社に来ると親友の赤塚高仁さんのことを考えます。私が同期の
桜を思い出して、英霊たちも夜桜になって私と同じように人間国宝の
幽玄な能舞台を観ていることを感じられるようになったのは、間違い
なく赤塚さんのおかげです。いつか、赤塚さんが火入れ奉行をされる
日が来ればいいなと思います。この国を命を懸けて愛し、守ろうとして
生きている赤塚さんなら堂々と務めてくださることでしょう。

 そして、そんな赤塚さんの気持ちが伝わり、夜桜能を楽しんでいる
大勢の皆さまにもそんな英霊のことを少し感じていただけるようになれ
ば、日本はもっといい国になれるのかなと思ったりしています。



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