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顕教と密教


 夏休みには、私の本来の主張である、リベラルな論調の本をたくさん
読みました。その中の1冊が加藤典洋著『戦後入門』(ちくま新書)です。

加藤さんは文芸評論家ながら、1985年の『アメリカの影』(講談社文芸
文庫)
、1997年の『敗戦後論』(ちくま学芸文庫)という代表作があり
ます。そして、そこから時間を経た2015年に発表された意欲作がこの
『戦後入門』なのです。背景としては、安倍政権という強力な政権が、
戦後政治の総決算を進めることに対するリベラル側からの危機感がある
ように感じます。

  

 最近、私もこのまま戦後政治を否定する流れを続けて行くことには、
一定の危惧を持っています。いまは、新しい政治のあり方を一人ひとり
がしっかりと向き合い考えていかなければならない時だと思うのです。
そうしないと、私たちは安倍政権を支えている人が目指している、日本
が世界の中心になって世界をリードしていくという八紘一宇の考え方に
則った世界づくりを目指すことになるでしょう。しかし、それは他国の
考え方とは到底なじまず、日本は再び世界を相手にした戦争に突入する
しかないという状況になりかねないことになると思います。

 ただ、残念ながら私はまだ、それを打開するためにはどうしたらいい
のかという明確な解を持っているわけではありません。詳細は割愛しま
すが、『戦後入門』の中で加藤さんが主張しているような方向に進めら
れるとは思えませんし、その他リベラルな考え方をする人たちの主張も
無理があるように思います。

かといって、政治や軍事的なことはアメリカにすべて頼って、日本は経
済だけを考えればいいという従来の吉田総理が作った考え方(吉田ドク
トリン)も、中国の台頭と相対的なアメリカの劣化を考えると、いつま
でも続けていくことは不可能だろうと思います。

 そのようなわけで、まずはタブーを作らず、それぞれがいろいろなこ
とを独自の視点で考えていくようになることが大事だと思うという逃げ
で、ひとまずは結論を出すことを避けておこうと思います。

 実は、ここで紹介したいと思ったのは、『戦後入門』の主張に対する
賛否を云々したかったのではなく、そこに出てきた顕教と密教の考え方
がおもしろいと感じたからです。この言葉の最初の出典は、1956年に発
表された鶴見俊輔と久野収による「日本の超国家主義 昭和維新の思想」
という論文に出てくるようです。

 伊藤博文が明治国家を運営するために使ったシステムの説明のために
用いられています。
分かりやすく説明されていますので、引用させていただきたいと思いま
す。


(引用開始)

 その論考の設問の一つは、なぜ、戦前に天皇が現人神(現に人となっ
て生きている神様=生き神様)だという信仰(?)が広まりえたのか、
ということでした。というのも、もしみんなが天皇を神様だなんて思っ
ていたら、合理的な考え方を基礎とする近代国家など経営できるわけが
ありません。それは、このあいだまで封建時代の中に生きていた国民が、
とても急激な近代化に即応できないだろうことを予想した伊藤博文が、
近代化の衝撃を緩和するためにおいた、緩衝材的な装置でした。そうし
たクッションのような衝撃吸収システムとして、伊藤は独特な天皇教
システムを作ったのでした。

(中略)

 しかし、その緩衝システムは、二つの顔をもたなければなりません。
開国まで、封建制のムラ世界に住んでいた基層民に向けては、天皇信仰
という顔、一方、明治国家の支配エリートに向けては、近代国民国家の
政治システムという顔です。

(中略)

 天皇は、国民に対する「たてまえ=顕教」では、あくまで絶対君主、
支配層間の「申しあわせ=密教」としては、立憲君主、すなわち国政の
最高機関であった。小・中学および軍隊では、「たてまえ」としての天
皇が徹底的に教えこまれ、大学および高等文官試験にいたって、「申し
あわせ」としての天皇がはじめて明らかにされ、「たてまえ」で教育さ
れた国民大衆が、「申しあわせ」に熟達した帝国大学卒業生たる官僚に
指導されるシステムが編み出された。

(引用終了)


 官僚システムに吸収しきれない軍部や衆議院が顕教のたてまえを前面
に押し出してしまったため、このシステムは破たんしてしまったという
のが結論になります。それに対して、戦後は吉田首相がやはり顕教とし
ては、日本は平和憲法を掲げて経済面で世界をリードしていくべき素晴
らしい国家だとしたのに対して、密教として東大法学部卒たる官僚たち
には、日本はアメリカに従属して生きていくしかないという真実を明ら
かにしながら国家の運営をしてきたというのです。

 ものごとを一面的に見ているきらいはありますが、とても考えさせら
れる考察です。ただ、顕教と密教の使い分けという吉田ドクトリンの賞
味期限は切れてしまっているのは確かだと思います。

やっぱり日本はこれからどのような政治システムをとるべきかという
夏休みの宿題を、皆さんと一緒に考えていく必要がありそうです。




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