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今月のにんげんクラブ ~6月号~

6月号巻頭言.jpg 


いま、イスラエルでこの原稿を書いています。私にとっては二度目のイスラエル訪問に
なります。前回は三泊四日の忙しい旅でしたが、エルサレムでイエス・キリストや聖母
マリアを感じたり、世界で唯一女性にも徴兵制度があり国民皆兵を実行している、イス
ラエル新兵の入隊式を行うマサダの遺跡も訪れることができました。そういった意味で、
イスラエルに来て最低限必要なことは感じることができたと思っていました。
 
今回の旅行は、この会報誌に「ヤマト人への手紙」を連載してくださっている赤塚高仁
さんを中心とした「聖書を体感するイスラエル10日間の旅」です。赤塚さんは故・糸川
英夫博士の意志を引き継いで、日本テクニオン協会の会長を務められ、25年前に糸
川博士とともに初めてイスラエルを訪れてから今回で12回目のイスラエルになるとい
う、日本で最もイスラエルのことを熟知している一人だと思います。
 
糸川博士といえば、戦前の一式戦闘機「隼(はやぶさ)」の設計者であり、戦後はロケッ
ト工学や組織工学の分野でご活躍された世界を代表する科学者のお一人です。そんな
糸川博士は世界中の大学の教壇に立つうちに、優秀な学生がほとんどユダヤ人である
ことに気付き、イスラエルに関心を持つようになりました。そして、そんなユダヤの強さの
秘密を探ろうと、イザヤ・ベンダサンというペンネームで『日本人とユダヤ人』(角川文庫
ソフィア)という名著を著された山本七平先生と、舩井幸雄も大変尊敬していた評論家の
小室直樹先生と三人でイスラエルを訪れたそうです。
 
日本の頭脳と言ってもいいような三人がイスラエルを研究するためにやってきたというの
ですから、最初は警戒されて当局の取り調べを受けたこともあったそうですが、日本とイ
スラエルが手を結ぶことが二度と世界戦争を起こさないために一番重要なことであると
いう信念を持たれた糸川博士は、やがてイスラエルの人々に心から尊敬されるようにな
りました。
 
さて、今回イスラエルに来て一番印象に残ったのはヤド・ヴァシェム(ホロコースト記念館)
です。命のビザを発給して6千人のユダヤ人を救った杉原千畝さんがヤド・ヴァシェムから
顕彰されており、日本人としてはそういう人が一人でもいたことにホッとした思いを抱きま
したが、ホロコーストの悲劇がイスラエルという国を1900 年の時を経て建国する大きな
きっかけになったことは間違いないと思います。
 
ヤド・ヴァシェムの展示は1948 年5月14日に初代首相ダヴィッド・ベングリオンが独立宣
言を読み上げている映像と、子どもたちがイスラエル国歌、ハティクヴァを歌っている映像
で締めくくられています。ホロコーストの悲劇を二度と繰り返さないために、彼らは自分た
ちのこの国家を造り上げたのです。ベングリオンが最愛の妻でありシオニスト運動の同志
でもあったポーラと共に眠る墓前で、ツアー参加者皆でハティクヴァと君が代を歌いました。
なぜか涙がこみ上げて止まりませんでした。
 
別途訪れたマサダの砦は、紀元後73年、イエス・キリストの死から約40年後にユダヤ民
族が国を失うという悲しい出来事の舞台となった遺跡です。何があっても自殺を認めない
ユダヤ民族にも関わらず、ローマの奴隷となるよりは死を選ぶという選択をし、女性2人、
子供5人を除く1000 人近い人がお互いを殺し合うというかたちでの自決を選びました。
この壮絶な古代ユダヤ国家の最期が、2000 年後のいまも続いているシオニズム運動の
原点となっています。
 
ここで私が感じたことは、いまの日本が国際社会で置かれている立場が、イエスの時代の
ユダヤのそれと似ているのではないかということです。強力なローマの属国として生きる
道を選んだユダヤは、その約1000 年前のダビデ王、ソロモン王の時代に最盛期を迎えて
いました。ユダヤ教という排他的な側面を持つ宗教を大事にしながら、長い間独自の文化
を保ってきたのですが、イエスの時代には頭の固い律法学者や自分のことばかり考える
政治家が生み出す矛盾に耐え切れなくなっていました。
 
イエスはそんなユダヤに訪れるであろう未来が全部分かっていた、もしかすると、2000 年
後の現在にイスラエルが国家として再建することまで見抜いていたのかもしれません。
そのうえで、神の子である自分が十字架にかかり人類の贖罪をすることで、今日まで社会
を存続させることを選んだのではないかと思うのです。一方、日本も神武天皇が即位して
皇紀2674 年という輝かしい文化を誇っています。しかし、明治維新から敗戦に至り、その
後実質的にはアメリカの属国であるという立場を選びながら謳歌しているいまの繁栄は、
実は砂上の楼閣でかなり危ういものなのかもしれません。
 
今回の旅は聖書を感じる旅でした。旧約聖書のダビデや預言者たち、それに新約聖書の
イエスや聖母マリア、それにペテロやパウロなどの使徒たちが、聖人としてではなく、悩み
もし裏切りもし怒りもする人間としていきいきと描かれて、それを実際に彼らが行動した地
で感じることのできる、本当に楽しい旅になりました。
 
イエスの時代には彼自身が犠牲になることや、最後はホロコーストの悲劇にまで至るよう
な悲しい歴史を必要としました。しかし、同じような運命の時を迎えているいまのヤマト民
族は、戦うことを選ぶのではなく、日本人の良い意味でのおおらかさ、いい加減さを駆使し
て、世界平和を作り上げることで民族の歴史を守りぬいていかなければならないのではな
いかと感じています。そしてヤマトの民が世界の歴史において、初めて本当の意味での
戦いのない真の平和を築きあげることができれば、それは世界中に拡がり、人類は大き
な進化を果たすことができるのではないでしょうか。
 
ベングリオンの最大の功績はイスラエルの国土の60%を占めるネゲブ砂漠の緑化に挑
戦したことです。私は中東やパレスチナに関する政治的なことについては不勉強ですが、
イスラエルが対立しているアラブ諸国はほとんどが砂漠の民です。一滴の水のために殺
し合いをしなければ生きていけないような過酷な自然の中で暮らす彼らが、本当の意味で
平和を手にするためには、砂漠を緑に変えていくしかない、これがベングリオンの信念だっ
たのです。
 
砂漠を緑にしていくことをアラブ諸国に拡げていく時に、闘争心の塊のようなユダヤ民族
とアラブ民族だけではうまくいかないことは目に見えており、そこで良い意味でいい加減な
ヤマト民族が必要となるのです。そして同時に、それをやり切ることがヤマト民族を滅びか
ら救える唯一の方法だという糸川博士の確信に触れることができたことが、この旅の最大
の収穫でした。



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