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こんにちは。にんげんクラブのこだまゆうこです。
アーヘンに来てから一ヶ月が経とうとしています。
ドイツに来る前、いろいろな人からドイツについて聞いた情報は、
「ドイツ人はとても几帳面で綺麗好き」ということでした。
沖幸子さんという方の書かれた『ドイツ流 掃除の賢人』という本では、
窓の掃除をしなければ、大家さんが怒りに来るという話や、
スルメを焼いたら「何か犯罪の行われている臭いがする」と、警察に通報された話、
ゴミを出したらそのゴミに香水をかけられた話など、ドイツ人の綺麗好きなことに関して、
びっくりするような話がいっぱい出てきました。
そのような事前知識があったため、整理整頓が上手でない私は
「ドイツ人が怒りに来たらどうしよう」と、はじめの一週間くらいはかなり緊張していました。
しかしながら、その心配は杞憂だったようです。
それというのも、私たちがドイツに滞在するのはわずか一年。
駅の近くの、家具付賃貸アパートを借りて住んでいるので、
同じアパートに住んでいるのは、同様に短期滞在の外国人か、もしくは学生さんだったからです。
(ちなみにドイツでは、教会を中心に街がつくられています。
かつて汽車は「不浄なものを運んで来る」と思われていたそうなので、
駅周辺はあまり栄えておらず、良い場所だとは思われていません。
「駅の近くは一等地」と認識している日本人の私には、とても便利な場所だと思えるのですが^^。)
ドイツの家では昼間にレースのカーテンをかけない家が多いため、
窓の外の向かいのアパートには、整理整頓のされていない部屋がいくつも見えます。
まわりと自分とを比較して安心する、というのはあまりよいことではありませんが、
とりあえず我が家が汚くて突然誰かに怒られることはなさそうだと安心しています(笑)。
ドイツ語もまだ喋れず、このような環境に住んでいるため、
まだ綺麗好きの生粋のドイツ人とは親しい交流がありません。
そのような私の目から見て、ドイツ人と日本人の綺麗好きについて、を論じたいと思います。
まず美的感覚、アートに関しては、今のところドイツ人のほうが圧倒的勝利です。
これはアーヘンが美しい街だから、というのもあるでしょうし、個人的な見解なので
多少の偏りがあるとは思います。
日本でも、京都などの世界に誇る美しい町がたくさんありますので、地域差もあるでしょう。
そのような地域差をなくして、全体を評価した場合は、やはりドイツ人のほうが
美的感覚が優れていると思います。これはおそらく、まわりの環境に調和しない建物が
建てられないことや、都会が一点に集中せず、自然が多いことなども関係していると思います。
ちょっとした商店などに入っても、店内には必ず絵画などのアートが飾られており、
売り物が芸術作品のように魅力的に並べてあります。
街には八百屋さんのように絵画を売る店がたくさんあり、人々の生活と、アートがなじんでいます。
日本で銀行というと、なんだか事務的な空間のように思えるのですが、ドイツ銀行では、
プリンターやシュレッダーなど、生活感のあるものは、すべて背の低い棚の中に隠され、
大きなモダンアートが飾られたガラス張りの待合室やロビーがあり、その美しさに
びっくりしてしまいました。
そのような美的感覚は、一朝一夕でできるものではありません。
おそらく、毎日のように掃除をして、生活感をなくして、美しいものを愛でる気持ちがなければ、
作れないものだと思います。
そのように思うので、やはりドイツ人は基本的に綺麗好きなのだろう、と思います。
一方「衛生」という面では、日本人がだんぜん優れていると思います。
ドイツ人の美的感覚については絶賛する私ですが、衛生面では多少理解のできないこともあります。
(以下、少し汚い話になりますが、ご容赦願います。)
それは、日本に比べると道のいたるところに、ワンちゃんの落し物・・・がたくさんあることです。
あれれ?アーヘンはなんだか犬の糞が多いかな?と思っていたら、ベルリンでは
一日の犬の糞の量がなんと16トンにもなると『「あっ、そう」ドイツ・暮らしの説明書』
(フィッシュ三枝子著)という本に書かれていました。
16トンというと、かなりの量です。これでは掃除をする人も大変だし、
常に足元に気を配りながら道を歩かなければなりません。
町にたくさんの「のら犬」がうろついているわけではないので、
犬の糞については無責任な飼い主が多いということだと思います。
ドイツで犬を飼うには犬の税金を払わねばならないので、
「国にお金払っているのだからいいでしょう?」と思う人が多いことも関係しているだろう、
と本には書かれていました。
お隣の国、フランスのパリでは、19世紀の半ばくらいまで道端には
犬ならぬ人の汚物が窓から捨てられ続けていたそうですから、
現在のヨーロッパ人が犬の糞にまで気を配らないのは、仕方がないことなのかもしれません。
とはいえ、そのような道を歩いた土足で家の中を過ごす生活習慣には、
やはり日本人としてはあまり理解ができません。
(また、補足ですが、ドイツ人はカバンに対する認識も、靴と同じような感覚で捉えているようです。
日本人は案外カバンを大切にし、綺麗な床に置くことも嫌う人が多くいますが、多くのドイツ人は
道端や土の上にも靴のように平気でカバンを置きます。
トイレの床にもハンドバッグを置いている人がいるのを見て、びっくりしました。
(ドイツの公衆トイレは扉の下の部分が開いているので、中にいる人のカバンや足などが見えます。)
そのような認識の違いのため、ドイツのレストランなどでテーブルの上に何気なく
ハンドバックを置くことは大変失礼なことのようです。旅行に行った際にはお気をつけください。)
現在では、主婦の労働を減らすために、家の中では靴を脱ぐ、
もしくは家専用の靴(スリッパ?)に履き替えるドイツ人も増えてはきているそうです。
このように、ドイツ人と日本人の綺麗好き感覚は、今のところ一長一短で、
どちらが優れているとも言えません。
科学者であり画家であり、哲学者でもある五井野正先生によると、
ゴッホやモネなど印象派を代表するヨーロッパのアートの流れは、もともとは、
日本の江戸時代を真似したものだそうです。
彼らはかつて、美しい日本の町並みや浮世絵のすばらしさに憧れました。
今の日本人は、そのようなアートの心を忘れてしまっているように思います。
日本人全体がアートの心を取り戻すのが先か、ドイツ人全体が家の中で靴を脱ぐのが先か、
どちらが先に達成されるかはわかりませんが、双方が、お互いの良い部分、長所を学びあい、
真似しあう、柔軟な成長をしていけばいいな、と思っています。
私もせっかくドイツへ来たのだから、もっとアートに興味を持って、
ドイツ人の美的感覚を学んで帰りたいと思っています。 (4月30日)
文章と関係ない写真ですが・・・旧西ドイツの首都、ボンの町並みです。
ボンはあのベートーベンの生まれた町だそうです。
こちらはベートーベンの生まれた家。わりと天井が低かったです。
(ドアの高さは170センチくらい)
昔はドイツ人も、そんなに大きくなかったのですね。