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第63回 冬のオランウータン      

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第1回 森の人 オランウータン
第2回 野生オランウータンの研究
第3回 ちょっと待って!エコな話はいい話?
第4回 外出自粛で考えること
第5回 緊急事態宣言
第6回 インドネシアとオランウータンと日本人
第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り
第8回 エネルギーのはなし
第9回 ご存知ですか、自然エネルギーのホントのこと
第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン
第11回 社会を考える -日本の霊長類学―
第12回 温泉に入るサル ~サルの文化的行動~
第13回 世界に知られたスノーモンキー
第14回 オランウータンいのちの学校
第15回 野生のオランウータンのくらし その1
第16回 野生のオランウータンのくらし その2 ~枝わたり~
第17回 野生のオランウータンのくらし その3 ~母子の橋渡し~
第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~
第19回 森林火災のあとの熱帯雨林
第20回 2021年の年頭に思うこと  ~GOTOの先~
第21回 科学の力
第22回 自然のバランスとスピード
第23回 オランウータンは何頭いますか?
第24回 オランウータンは何頭いますか? その2
第25回 インドネシアの大雨と大洪水
第26回 緊急事態宣言 再び
第27回 「自然」について考える
第28回 見守ることの大切さ ~キャンプ・カカップの取り組み~
第29回 オランウータンの長い子育て
第30回 森を残そう ~鎮守の森の意味 熱海伊豆山の土石流~
第31回 オリンピックの陰で
第32回 野生オランウータンの観察 その1 -年齢ってどのようにわかるの?-
第33回 野生オランウータンの観察 その2 長期間の観察の重要性
第34回 野生オランウータンの観察 その3 バユールの誕生
第35回 野生オランウータンの観察 その4 長期の追跡
第36回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」
第37回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」 その2
第38回 お話し会「オランウータンにいつまでも熱帯の森を」
第39回 「シンプルで幸せな生活」は壊れやすい
第40回 <響き合ういのち> ヒルデガルト聖歌コンサート
第41回 2022年 年頭に考える 100年前の日本のこと、これからの日本のこと
第42回 熱帯雨林の現実 ~インドネシア、新首都建設へ~
第43回 熱帯雨林の現実 その2
第44回 春に考える
第45回 オランウータンの「考える」
第46回 霊長類研究を考える
第47回 さまよえるウラナミシジミ 霊長類学者としての私の原点
第48回 高校時代の思い出 ~清澄山の蝶と蛾の話~
第49回 海からの手紙 ~陸地と海はつながっている~ 瀬戸内最後の楽園、祝島から
第50回 里山、里海、そこにある人々の暮らし
第51回 鼎談 ~ていだん~
第52回 イチモンジセセリの渡り ~大集団の実態と謎~
第53回 G20 インドネシアで開催 -世界の動きは-
第54回 万博とオランウータン
第55回 愛・地球博2005 オランウータンウィークの訴え
第56回 人間は自然界の一部か
第57回 オランウータンの森の痛(いた)みを感じる
第58回 昭和の終わり、バブル時代と今
第59回 山の藤花に思ふ
第60回 蓄音機の音色と熱帯の森 ~森人処もりびとどころ~
第61回 2024年 ヒトの脳は何処へ向かうか
第62回 どうしてそんなに電力が必要なのか
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第63回 冬のオランウータン


インドネシアでは先日5年に一度の直接選挙による大統領選が行われました。
大統領の連続3選が禁じられているため現職のジョコ大統領は出馬できず、3度目の正直で
プラボウォ氏が新大統領に選出。
過去2回、2014年と2019年の大統領選挙で敗れているプラボウォ氏。
インドネシアの大統領選挙は副大統領候補とのペアで立候補し争われるため、副大統領候補を
誰にするかが勝敗の行方を決めるともいわれています。

今回の副大統領候補は民衆に人気の高いジョコ大統領の長男でした。
プラボウォ氏は軍出身で長期独裁スハルト政権を最高幹部として支えてきたひとり。
今回はこれまでの選挙での政敵だったはずのジョコ支援者もとり込み、若者層中心に人気を
集めての圧勝といいます。
民主化も何も、辻褄合わずのご都合主義ですが、ある意味実にインドネシアらしい結果です。

私たちはインドネシアの熱帯雨林の中で野生オランウータンを研究しているわけですが、
こうした政治のごたごたは遠く離れた都市部の問題ではありません。
プラボウォ氏は自身が巨大な資源開発会社20数グループの長を務める実業家でもあります。
石油、石炭、天然ガスなどの地下資源はもとより、木材、パーム油など、熱帯雨林の利権を
政治家として動かしこれまで巨万の富を得てきました。

カリマンタン島への首都移転はジョコ大統領が始めた事業で、プラボウォ氏もこの路線を
継承するということですが、そもそも首都を移転しようがしまいが、熱帯雨林開発は最初から
プラボウォ氏の目論見ですし、大きな切り札なわけです。
「資源ナショナリズム」などといまさら言われていますが、当然のことです。
対立候補に比しても圧倒的に熱帯資源とのつながりの深い新大統領の誕生です。

スハルト政権というのは軍事独裁という点においてよく語られますが、同時にそれを取り巻く
各種の利権集団との強い結びつきの長い歴史があり、インドネシアの森林資源、地下資源ビジ
ネスは現在でもこの利権とともに脈々と受け継がれているのです。
表面的にはすべてが変わって、過去のこと、旧時代のこと、と片付けられてしまいますが、
プラボウォ氏の過去の選挙戦を支えてきた資金力の源泉はこうした利権、熱帯雨林パワーから
生み出されてきたものでもあるのです。開発の嵐は止みそうにありません。

常夏の国に暮らす、冬を知らないオランウータンですが、状況はまさに冬のオランウータン
です。
首都新設の動きは巨額の投資につながり、ますます拍車がかかることでしょう。
話は変わって、先日保育園の子どもたちにオランウータンのお話をする機会がありました。
この3月で卒園、春には小学生になるみなさん。オランウータンの赤ちゃんは6歳でお母さん
から独立して広い森の中をひとりで暮らしていくんだよという話をきいた子どもたち。

ちょうど自分たちと同じ年、オラウータンは「すごいな~」と自分事で考えてみているようで
真剣そのもの。
そして、質問の山。
たくさんの、しかもひとつひとつ自分で考えた質問の数々が止まらない。
興味いっぱいでした。
的確に話を理解して、そして自分のこととしても受け止めて考える。
ヒトも6歳ともなれば本来持っている理解力、集中力とも凄いものだと思います。

今回とくに何度も質問されたのが「冬のオランウータンはどうしているの?」ということ。
「冬???」どうして冬?ふゆ?と戸惑ったけれど、考えてみれば「オランウータンは真夏の
国に一年中住んでいます」「暑い国の生き物です」と私が話したからなんですね。

最近の子どもたちは日本の動物園でのオランウータンをよく知っています。
当然冬のオランウータンの姿も見ているわけで、「冬のオランウータン」のことが心配に
なったのでしょう。
ピンとこなくて「オランウータンは夏の国に住んでいます!」なんて最初答えていた私。
だから子どもたちは、自分の知っている冬のオランウータンのことを思い描き何度も聞いて
いたのね。
「寒くないのかな~。」と。

この素直な、やさしい心。
相手に共感して、相手の立場に身をおいて想像する。
それがたとえオランウータンであろうとも。
私たちオトナの世界では今SDGsが大流行りです。
持続可能な開発目標とはいうけれど、誰にとっての持続だか、結局は自分たちのことばかりを
考えています。
インドネシアの新首都も「環境にやさしいグリーンシティ」などという言葉ばかりが踊り、
大地を削っては道をつくり、周辺どころか広大な熱帯雨林地帯をめちゃめちゃにしています。

でもこれを「めちゃめちゃ」とは言わず「発展」と捉える人が沢山だし、それこそが独立100
周年の2045年に「先進上位5カ国入り」を目指すインドネシアにとっての理想であり、目標な
わけです。
Gold Indonesia Vision 2045と言いますが、インドネシアの成長の勢いとパワーを実際に見て
いると、絵に描いた餅ではないなあとつくづく思うとともに、ヒトの行き着くところはどこ
なのだろうと不安にも思います。

(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 4
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 4


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 2
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 2


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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