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第58回 昭和の終わり、バブル時代と今   

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第1回 森の人 オランウータン
第2回 野生オランウータンの研究
第3回 ちょっと待って!エコな話はいい話?
第4回 外出自粛で考えること
第5回 緊急事態宣言
第6回 インドネシアとオランウータンと日本人
第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り
第8回 エネルギーのはなし
第9回 ご存知ですか、自然エネルギーのホントのこと
第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン
第11回 社会を考える -日本の霊長類学―
第12回 温泉に入るサル ~サルの文化的行動~
第13回 世界に知られたスノーモンキー
第14回 オランウータンいのちの学校
第15回 野生のオランウータンのくらし その1
第16回 野生のオランウータンのくらし その2 ~枝わたり~
第17回 野生のオランウータンのくらし その3 ~母子の橋渡し~
第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~
第19回 森林火災のあとの熱帯雨林
第20回 2021年の年頭に思うこと  ~GOTOの先~
第21回 科学の力
第22回 自然のバランスとスピード
第23回 オランウータンは何頭いますか?
第24回 オランウータンは何頭いますか? その2
第25回 インドネシアの大雨と大洪水
第26回 緊急事態宣言 再び
第27回 「自然」について考える
第28回 見守ることの大切さ ~キャンプ・カカップの取り組み~
第29回 オランウータンの長い子育て
第30回 森を残そう ~鎮守の森の意味 熱海伊豆山の土石流~
第31回 オリンピックの陰で
第32回 野生オランウータンの観察 その1 -年齢ってどのようにわかるの?-
第33回 野生オランウータンの観察 その2 長期間の観察の重要性
第34回 野生オランウータンの観察 その3 バユールの誕生
第35回 野生オランウータンの観察 その4 長期の追跡
第36回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」
第37回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」 その2
第38回 お話し会「オランウータンにいつまでも熱帯の森を」
第39回 「シンプルで幸せな生活」は壊れやすい
第40回 <響き合ういのち> ヒルデガルト聖歌コンサート
第41回 2022年 年頭に考える 100年前の日本のこと、これからの日本のこと
第42回 熱帯雨林の現実 ~インドネシア、新首都建設へ~
第43回 熱帯雨林の現実 その2
第44回 春に考える
第45回 オランウータンの「考える」
第46回 霊長類研究を考える
第47回 さまよえるウラナミシジミ 霊長類学者としての私の原点
第48回 高校時代の思い出 ~清澄山の蝶と蛾の話~
第49回 海からの手紙 ~陸地と海はつながっている~ 瀬戸内最後の楽園、祝島から
第50回 里山、里海、そこにある人々の暮らし
第51回 鼎談 ~ていだん~
第52回 イチモンジセセリの渡り ~大集団の実態と謎~
第53回 G20 インドネシアで開催 -世界の動きは-
第54回 万博とオランウータン
第55回 愛・地球博2005 オランウータンウィークの訴え
第56回 人間は自然界の一部か
第57回 オランウータンの森の痛(いた)みを感じる
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第58回 昭和の終わり、バブル時代と今


4月29日はその名も「昭和の日」。
もともとは昭和の天皇誕生日の祝日が、その後、「みどりの日」を経て、「昭和の日」へ。
ということで、昭和の時代に思いを馳せて、前回紹介した「電気の使い方でいえば、現代の
オール電化ではなく昭和30年頃のハーフ電化を。」という話の続きを書きたいと思います。

ところで、昭和30年と言えば1955年。
今から70年近く前の話です。
記事の筆者である小泉和子さんは「昭和のくらし博物館」館長で、御年89歳。
ですから今の世の中、70歳近い方でも、そのころのくらしは知らないという方も多くなって
きたのではないでしょうか。

知らない人は、「そんな昔の生活には戻れない」と簡単に言います。
「昔の生活に戻る」という言葉に抵抗を覚えるわけです。
知らないのですから、勝手に想像して、ろうそくに、薪に、かまど?それは無理、無理と
いうわけです。
では、そこまで昔でなくても、ちょっと考え直して、1980年代ごろのみなさんご自身の
生活を思い出してみてください。

日本は1980年代半ばから「バブル景気」と呼ばれる空前の好景気に沸きました。
あのバブルのころの生活に戻ることはそんなに不便なことですか?どうでしょうか。
若いみなさんは、ご両親に聞いてみてください。
おじいちゃん、おばあちゃんに聞いてみてください。
ろうそくどころか、ディスコに、ネオンに、もちろんエアコンも、と電気をガンガン
使っての景気の良い都会生活、消費生活を送っていた時代、それが昭和の終わり、昭和
最後の時代です。

それでも意外なことに1985年当時の東京電力管内の1日の電力使用量(冬場)は最大でも
3000万キロワット前後です。
バブルの時代に節電なんて言わなかったですよね。
そのバブル時代でも電力使用量は4000万キロワット前後です。
しかしその後、1990年代に入り、バブル景気がはじけ景気は悪くなる一方なのに、電力
使用量だけは右肩上がり。

皮肉なことに、21世紀になって節電、節電と言われる時代になると、なぜか使用電力は
1日5000万キロワットを超えるわけです。
そして、あの原発事故を体験した後も節電、節電騒ぎとは裏腹に、最大使用量は2022年1月
には5300万キロワットに逆戻り。

何だかおかしな話ですが、実は私たちは知らないうちに節電、節電と言いながら、社会全体
としてはますます「電気を使う」仕組みの社会に暮らすように仕向けられているのです。
「オール電化」などという言葉が、その仕組みを代表しています。

足るを知るという言葉がありますが、「電力が足りない、足りない」と煽るのではなく、
まずはバブル時代の電力使用量ぐらいに控えてはどうなのでしょうか。
ましてこれが小泉さんのおっしゃる1955年に戻したら電気の最大使用量(冬場)はなんと
257万キロワット。
現在の5000万キロワットと比べると、ハーフ電化どころか20分の一。

この解説はごくごくおおざっぱなものです。
東京電力管内の冬季の1日の最大使用電力量でのみ比較して解説したものなので、実際は
違うのかもしれませんが、でも電力使用量の概要と流れはおおざっぱには把握できると
思います。(数字は東京電力のサイトを参照しました)。

「電気がなかったら大変だ」「電気がなければ経済がダメになる」こんな宣伝を鵜呑みに
して、原子力発電所が欠かせないものと、思いこまされてきた日本人。
そしてその思い込みは、原発事故が起こった後でも健在です。

電気があろうとなかろうと経済はダメになっているのに、電力使用量だけはますます
増加している。
これが現実で、それでも私たちは何の疑問もなく、健気に「経済、経済。節電、節電」と
騒いでいるのです。
節電ではなく、社会の仕組みとしての「減電」が必要なのです。

個人には湯たんぽだ、エアコンの設定温度がどうだこうだと言っている一方で、実は一説
には現在の4000倍の電力が必要な社会が来るそうです。
ところで一体何にそんなに電力が必要なのでしょうか。
それはずばり「情報処理技術分野」、いわゆるデジタルです。
「データセンター」「AI(人工知能)」「スーパーコンピュータ」等々の消費電力は桁違い
なのです。

マイナンバーカードを皮切りに岸田内閣が強力に推し進めようとしている「社会全体の
デジタル化」。
多くのみなさんがカード取得に大騒ぎしたことでしょうが、このシステムを今後、新設し、
維持・管理していくためには実はさらに膨大な量の電力が消費されるのです。

国民みんなが持っているカードを有効に動かすために「欠かせないシステム」だから
電力が必要。
だから原子力発電所も再稼働。
火力発電所も新設。
自然エネルギーもどんどん増やせ。
こんなおかしな仕組みづくりを政府はもちろん、2万ポイントと引き換えに一人一人の
国民がいま一生懸命協力し、進めているのです。
オランウータンの保護なんて、地球環境なんてもはや考慮外の現実です。

「日常生活で電気に頼ることから考え直すべき。目の前の便利さや快適さにただ流される
のではなく、自分が生きていく上で必要な仕事は、できるだけ自分でやってみる。」と
いうのは冒頭の小泉さんのお言葉。
まったくです。
コンピューター任せの社会の未来はいったいどのようなものなのでしょうか。
その危険性を指摘しないAIは無能で、危険なものだと思います。
みなさんはいかがお考えでしょうか。

(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 4
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 4


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 2
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 2


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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