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第53回 G20 インドネシアで開催 -世界の動きは-   

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第1回 森の人 オランウータン
第2回 野生オランウータンの研究
第3回 ちょっと待って!エコな話はいい話?
第4回 外出自粛で考えること
第5回 緊急事態宣言
第6回 インドネシアとオランウータンと日本人
第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り
第8回 エネルギーのはなし
第9回 ご存知ですか、自然エネルギーのホントのこと
第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン
第11回 社会を考える -日本の霊長類学―
第12回 温泉に入るサル ~サルの文化的行動~
第13回 世界に知られたスノーモンキー
第14回 オランウータンいのちの学校
第15回 野生のオランウータンのくらし その1
第16回 野生のオランウータンのくらし その2 ~枝わたり~
第17回 野生のオランウータンのくらし その3 ~母子の橋渡し~
第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~
第19回 森林火災のあとの熱帯雨林
第20回 2021年の年頭に思うこと  ~GOTOの先~
第21回 科学の力
第22回 自然のバランスとスピード
第23回 オランウータンは何頭いますか?
第24回 オランウータンは何頭いますか? その2
第25回 インドネシアの大雨と大洪水
第26回 緊急事態宣言 再び
第27回 「自然」について考える
第28回 見守ることの大切さ ~キャンプ・カカップの取り組み~
第29回 オランウータンの長い子育て
第30回 森を残そう ~鎮守の森の意味 熱海伊豆山の土石流~
第31回 オリンピックの陰で
第32回 野生オランウータンの観察 その1 -年齢ってどのようにわかるの?-
第33回 野生オランウータンの観察 その2 長期間の観察の重要性
第34回 野生オランウータンの観察 その3 バユールの誕生
第35回 野生オランウータンの観察 その4 長期の追跡
第36回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」
第37回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」 その2
第38回 お話し会「オランウータンにいつまでも熱帯の森を」
第39回 「シンプルで幸せな生活」は壊れやすい
第40回 <響き合ういのち> ヒルデガルト聖歌コンサート
第41回 2022年 年頭に考える 100年前の日本のこと、これからの日本のこと
第42回 熱帯雨林の現実 ~インドネシア、新首都建設へ~
第43回 熱帯雨林の現実 その2
第44回 春に考える
第45回 オランウータンの「考える」
第46回 霊長類研究を考える
第47回 さまよえるウラナミシジミ 霊長類学者としての私の原点
第48回 高校時代の思い出 ~清澄山の蝶と蛾の話~
第49回 海からの手紙 ~陸地と海はつながっている~ 瀬戸内最後の楽園、祝島から
第50回 里山、里海、そこにある人々の暮らし
第51回 鼎談 ~ていだん~
第52回 イチモンジセセリの渡り ~大集団の実態と謎~
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第53回 G20 インドネシアで開催 -世界の動きは-


ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した世界規模でのエネルギー危機が、日本はもとより
世界を襲っています。
特に欧州においては天然ガスの45%、石油の27%をロシアに依存していたわけで、これらの
供給が閉ざされた結果、なりふり構わぬ争奪合戦が世界各地で起きているわけです。

さて、インドネシアのバリ島で開かれていたG20首脳会議、エジプトで開催されていたCOP27
国連会議が相次いで閉幕しました。
戦争とエネルギー危機という現実を前に、「脱炭素」などときれいごとを言ってきた国際社会は
どう動くのか。
大変な世界情勢下でしたが、結果として、表向きは「金で解決する」という、解決には程遠い、
どうにも動けない愚かな状態がより明らかとなったように思えます。
金を出し続けることになる日本は本当に大丈夫なのでしょうか。

G20に関連しては、インドネシアが石炭火力発電から脱却するのを支援するため、日本や
アメリカなど10カ国地域が今後3~5年間のあいだに官民で200億ドル(約2兆8000億円)を
拠出すると発表。
気候変動対策の金融支援プロジェクトとしては過去最大規模といいます。
これは先進7カ国(G7)がすでに合意していた地球規模の課題である新興国・途上国の脱石炭
を支援する枠組み「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」と呼ばれるもので、
日米がインドネシアの主な支援国となっているそうです。

一方のCOP27の方は、長年の気候変動で発展途上国に生じた損失と被害への手当てに特化した
支援基金「損失と被害(ロス&ダメージ)」を設立することが決まったそうです。
いずれにしろ、どれも途上国への金銭的「支援」が約束されるだけで、被害の根本原因である
化石燃料の需要に関しては全く議論が進まなかったわけです。
脱炭素などと言っているだけで、結局は経済最優先、右肩上がりの発展をどの国もが夢見る
限り、これは当然と言えば当然です。

温暖化、脱炭素という言葉に世界が躍っている間に、世界の石炭火力発電所の2021年の発電量
は初の10兆KW越え、過去最大となりました。
電力需要、資源需要がこれからもますます増加するだけの道をヒトは選択しているようです。
電力や資源そのものの使用削減という話題は国益優先の国際社会ではタブーなのです。

戦争に慌てた欧州はこの1年間、「脱ロシア」を進めるためとして、あらゆる手で化石燃料の
調達に奔走してきました。
新規炭鉱を開発するイギリス。
ドイツは廃止するはずの石炭火力のフル稼働を準備、新たなガス貯蔵拡大計画も発表。
オランダも、石炭火力発電所の稼働率制限を撤廃。
イタリアも石炭火力の再稼働を検討中。
南アフリカ、ボツワナ、タンザニアなどアフリカ諸国には石炭供給の引き合いが殺到。
コロンビア、アメリカからの石炭購入までと手を広げています。

こうした煽りは当然アジア諸国にも及びます。
インドも石炭火力をフル稼働。さらに、100以上の炭鉱を再稼働し、今後2~3年で1億トンの
石炭増産を見込むといいます。
ベトナムも国内の石炭生産の拡大。
中国はなんと日本の年間石炭消費量の倍近く、年間3億トンの石炭生産能力を増強。

一方で、石炭輸出の最王手、オーストラリアやインドネシは石炭輸出の拡大要求に応える余力
はさほどないと売り控え。
インドネシアは国内向けの不足を理由に輸出禁止措置に出るなど、この機とばかりに大変強気
な対応をみせました。
なにせインドネシアは世界最大の石炭輸出国。
2020年の輸出量は約4億トン。
最大の輸出相手国の中国が約3割(約1・2億トン)を占め、インド、日本、韓国と続きます。

さて、そのインドネシアはG20の会期中に諸外国から70億~80億米ドル(約9,824億~1兆
1,228億円)の投資確約を得たと発表しています。
投資を確約したのは韓国や中国、欧州の複数国など。
東カリマンタンに整備される新首都「ヌサンタラ」の開発には、韓国・LGグループのほか、
UAE、中国、欧州諸国などが関心を示しているといいます。
資源外交はまだまだこれからです。

先の脱炭素支援のJETPはじめ、日本もインドネシアに対して支援、支援を打ち出しています
が、親中派のインドネシア相手に脱炭素支援にお金を投じても、結局は形を変えて、わからない
所で中国に利する仕組みの中に取り込まれているだけ。
石炭開発が収まることはないと思います。
なにせ、世界全体ではまだ約300ギガワット(GW)相当の石炭火力発電所の新規建設が計画
されていて、その約3分の2に当たる197GWが中国で建設される予定なのです。
ちなみに1GWは100万KW。だいたい原子力発電の1基分です。

私には温暖化も、脱炭素も、SDGs持続可能な云々も、問題をうやむやにするツールの一つに
思えてなりません。
石炭はもとより、石油・天然ガスなどの化石燃料の使用はたとえ先進国と言われる国々が脱炭素
を叫んだとしても、どこかで誰かが必ず使い続けるのです。
こういう現実を前に、こうした化石燃料の産出地の環境、自然をどのように残していくのか。
残さなくていいのか。
相手国任せにして国際社会が真剣に考えない限り、地球環境などというものは単なる宣伝文句の
一つ程度に利用されているだけなのではないでしょうか。

G20にCOP27、会議は踊るされど進まず。オランウータンも熱帯の森も、相変わらず救いの
手が差し伸べられることはなく、新首都建設とお金の話ばかりがヒトの世です。

(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 4
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 4


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 2
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 2


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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