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第49回 海からの手紙
    ~陸地と海はつながっている~ 瀬戸内最後の楽園、祝島から   

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第1回 森の人 オランウータン
第2回 野生オランウータンの研究
第3回 ちょっと待って!エコな話はいい話?
第4回 外出自粛で考えること
第5回 緊急事態宣言
第6回 インドネシアとオランウータンと日本人
第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り
第8回 エネルギーのはなし
第9回 ご存知ですか、自然エネルギーのホントのこと
第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン
第11回 社会を考える -日本の霊長類学―
第12回 温泉に入るサル ~サルの文化的行動~
第13回 世界に知られたスノーモンキー
第14回 オランウータンいのちの学校
第15回 野生のオランウータンのくらし その1
第16回 野生のオランウータンのくらし その2 ~枝わたり~
第17回 野生のオランウータンのくらし その3 ~母子の橋渡し~
第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~
第19回 森林火災のあとの熱帯雨林
第20回 2021年の年頭に思うこと  ~GOTOの先~
第21回 科学の力
第22回 自然のバランスとスピード
第23回 オランウータンは何頭いますか?
第24回 オランウータンは何頭いますか? その2
第25回 インドネシアの大雨と大洪水
第26回 緊急事態宣言 再び
第27回 「自然」について考える
第28回 見守ることの大切さ ~キャンプ・カカップの取り組み~
第29回 オランウータンの長い子育て
第30回 森を残そう ~鎮守の森の意味 熱海伊豆山の土石流~
第31回 オリンピックの陰で
第32回 野生オランウータンの観察 その1 -年齢ってどのようにわかるの?-
第33回 野生オランウータンの観察 その2 長期間の観察の重要性
第34回 野生オランウータンの観察 その3 バユールの誕生
第35回 野生オランウータンの観察 その4 長期の追跡
第36回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」
第37回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」 その2
第38回 お話し会「オランウータンにいつまでも熱帯の森を」
第39回 「シンプルで幸せな生活」は壊れやすい
第40回 <響き合ういのち> ヒルデガルト聖歌コンサート
第41回 2022年 年頭に考える 100年前の日本のこと、これからの日本のこと
第42回 熱帯雨林の現実 ~インドネシア、新首都建設へ~
第43回 熱帯雨林の現実 その2
第44回 春に考える
第45回 オランウータンの「考える」
第46回 霊長類研究を考える
第47回 さまよえるウラナミシジミ 霊長類学者としての私の原点
第48回 高校時代の思い出 ~清澄山の蝶と蛾の話~
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第49回 海からの手紙

    ~陸地と海はつながっている~ 瀬戸内最後の楽園、祝島から

久しぶりの記事更新になってしまいました。
こんにちは。鈴木南水子です。

今年の6月は観測史上初尽くしの記録的猛暑となりました。
これから日本列島は夏本番を迎えるわけですが、短い梅雨といい、夏の水不足、そして今後の
農作物への影響が非常に危惧されます。
でも、とりあえず目先の心配事は電力需給のひっ迫でしょうか。
エアコン無くしては生きられないかのような現代社会、狂ってしまっているようです。

そんな中ですが7月23日に、こだま まこと さんをゲストにお迎えしてのお話し会
「オランウータンに、いつまでも熱帯の森を」が予定されています。
https://www.ningenclub.jp/blog01/archives/2021/12/_part_4723.html

思い起こせば昨年6月、こだまさんの「海からの手紙 2021」を山田征さんにご紹介いただい
たのがきっかけだったのですが、なんとこの7月にわざわざこだまさんが山口県の離島「祝島」
からいらして、征さんを交えての鼎談が実現することとなりました。
ご企画くださったみなさま、貴重な機会をありがとうございます。

こだまさんは、にんげんクラブの会報誌(2022年1月)にも「海藻の砂漠化を防ぎたい、海から
の手紙」としてインタビューが掲載されているのでご存知の方も多いかとは思います。
反原発の運動をきっかけに山口県上関町祝島に移り住み、海藻の収穫出荷作業を中心に、海産物
販売「こだまや」さんとして、海辺から山までを一つの連なる生態圏と考え、海辺に豊かさを
呼び戻せる持続可能な農漁業を実践しながら暮らしている方です。

「自分では手に負えないことだからと言って、自分がやめてしまうのが一番つまらないこと
だから、結果がどうであれ伝えていくし、自分のできることをし続けよう、と思っている。」
このようにこだまさんは語っていますが、素晴らしいなと思います。

「美しい自然」という言葉は美しいですが、その背後に隠されている現実は、自然が「美しい」
といわれるほど厳しいし、問題がいっぱいです。
熱帯雨林の抱える現実を目の当たりにしていると、私も文字通り「自分には手に負えない」と
思うことばかりです。

「こんな不毛なことをなぜ続けるのか。」という問いをよく投げかけられますが、「勝ち目が
あるかなど問題ではない。大切なのはどんな人生を送るかだ。」というのは南米のとある生態
学者、活動家の言葉ですが、この言葉どうり、未来に向けて、ひとりひとりが生き方を問われ
ているのだとも思います。

自然に勝ち負けはない。人知の及ぶところではないという言葉がありますが、自然はそもそも
ヒトの手に負えないことばかりなのです。
オランウータンの生き方を見ていると、ヒトはもっと謙虚に、自然とともに歩めないものか
とも思いますが、ヒトはそんなことすら考えもつかない奢(おご)った生活を好んでしまう
ものです。

オランウータンは絶滅の危機と言われますが、彼らの苦境は実は私たちヒトの苦境なのです。
私はいつも「オランウータンに、いつまでも熱帯の森を」と言ってはいますが、これは取りも
直さず、私たちヒトのためでもあるのです。
豊かな、美しい自然を感じることのできないヒトの社会に対して、オランウータンは警告して
くれているのです。

最後にこだまさんが昨年の6月に書かれた「海からの手紙」を、ほんの一部ですがご紹介させて
ください。
海藻が、ひじきが、私たちに警告してくれている現実に戦慄を覚えます。
広い「海で起こったことは誰もわからない」、シーストーリーという言葉があります。
海は広いな大きいなと、なんでも水に流して気づかないままでよいのでしょうか。

「海からの手紙 2021」

毎年こだまや祝島ひじきを購入してくださっている皆様へ

 現在、世界中の海岸で海藻が激減しています。特にここ数年は祝島でも目に見えて海藻帯の
衰退がみられるようになりました。今年の祝島の磯はこれまでにない程の磯焼け(海藻が消滅
する現象)を起こしています。

 初春の祝島の磯では、これまで岩場を多様な海藻が埋め尽くし、岩肌が露出するという事は
ありませんでした。水深や海岸の条件によって棲み分けされた多様な種類の海藻の帯が綺麗に
島を一周取り囲んでいたのですが、それが今年はまだらに生息し、隙間には裸の岩肌が見える
程に海藻が少なくなっています。一部の海岸では全く海藻が無い砂漠のような状態になって
いました。

中略

また地球上の酸素の3分の2は海藻と植物プランクトンが生成しているという事実もあります。
陸地にある森林よりも多くの二酸化炭素を海洋植物は吸収しているのです。その海藻が環境
変化によって、たった一年にして砂漠になってしまうという事に、まだあまり目が向けられて
いません。地上の草木が一年にして砂漠になれば誰もが驚き、原因の究明と対処にすぐ力が
そそがれるかもしれません。しかし海の中で人知れず大きな役割を担ってきた海藻がこのよう
な危機にある事にはまだあまり目が向けられていないように思います。

陸地と海は繋がっています。森林伐採と単一樹木の植林によって森は保水力を失い、土砂や
有機物は海へ流亡し、さらに海底に堆積した有機物は嫌気性分解され、硫化水素やメタンを発生
させているともいわれています。水に溶けた硫化水素は海を酸性化し、このことも海藻はじめ
海の生態系を壊している原因といわれています。水温上昇によって活発化する嫌気性分解は、海
の酸性化だけでなくメタンの発生を通してさらに温暖化に拍車をかけています。このままいけば
地球全体の冷却装置であった海は、ある一線を超え蓄熱装置へと役割を変化させてしまいます。
その帰結は、加速度的な巨大台風や豪雨、猛暑の発生です。海藻の減少は、ただそれが食べられ
なくなる、ということではなく、異常を知らせる警告そのものに他なりません。

 新幹線や高速道路の為に行われたトンネル工事、埋め立てや護岸工事が地下水脈を変えて
しまい、海底に湧き出していた湧水が絶えてしまったとも考えられます。湧水は、大地に染み
込み、時間をかけて海まで流れ、海底に酸素と栄養素を供給し、海の生き物たちを底支えして
いたものでした。田畑への化学肥料や農薬の大量投入や工場生活排水によって悪化した水質は
かつての姿をいまだ取り戻してはいません。海岸には絶望的な量のプラスチックごみが漂着
し続け、波に砕かれもう二度と回収できない破片となって海水の成分の一部となっていって
います。

後略

7月の第3月曜日、7月18日は「海の日」だそうです。
祝日として1996年に定められた当初は、7月20日が海の日でしたが、国民が余暇を取れる機会
を増やし、観光業・運輸業が活性化される経済効果を狙ったハッピーマンデー制度によって
現行のようになりました。
海に感謝をささげると言いつつ、結局は「経済効果」狙いというのが、なんとも「らしい」話
ですが、ヒトの勝手な思惑ではなく、7月23日のお話し会では、こだまさんが伝える海からの
警告に、一人でも多くの方が真摯に耳を傾け、気づいてほしいと思っています。

どうぞよろしくお願いします。

(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 2
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 2


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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