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第40回 <響き合ういのち> ヒルデガルト聖歌コンサート      

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第1回 森の人 オランウータン
第2回 野生オランウータンの研究
第3回 ちょっと待って!エコな話はいい話?
第4回 外出自粛で考えること
第5回 緊急事態宣言
第6回 インドネシアとオランウータンと日本人
第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り
第8回 エネルギーのはなし
第9回 ご存知ですか、自然エネルギーのホントのこと
第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン
第11回 社会を考える -日本の霊長類学―
第12回 温泉に入るサル ~サルの文化的行動~
第13回 世界に知られたスノーモンキー
第14回 オランウータンいのちの学校
第15回 野生のオランウータンのくらし その1
第16回 野生のオランウータンのくらし その2 ~枝わたり~
第17回 野生のオランウータンのくらし その3 ~母子の橋渡し~
第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~
第19回 森林火災のあとの熱帯雨林
第20回 2021年の年頭に思うこと  ~GOTOの先~
第21回 科学の力
第22回 自然のバランスとスピード
第23回 オランウータンは何頭いますか?
第24回 オランウータンは何頭いますか? その2
第25回 インドネシアの大雨と大洪水
第26回 緊急事態宣言 再び
第27回 「自然」について考える
第28回 見守ることの大切さ ~キャンプ・カカップの取り組み~
第29回 オランウータンの長い子育て
第30回 森を残そう ~鎮守の森の意味 熱海伊豆山の土石流~
第31回 オリンピックの陰で
第32回 野生オランウータンの観察 その1 -年齢ってどのようにわかるの?-
第33回 野生オランウータンの観察 その2 長期間の観察の重要性
第34回 野生オランウータンの観察 その3 バユールの誕生
第35回 野生オランウータンの観察 その4 長期の追跡
第36回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」
第37回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」 その2
第38回 お話し会「オランウータンにいつまでも熱帯の森を」
第39回 「シンプルで幸せな生活」は壊れやすい
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第40回 <響き合ういのち> ヒルデガルト聖歌コンサート


先日12月14日はにんげんクラブ主催の 春原恵子(すのはらけいこ)さんのア・カペラ・
コンサート<響き合ういのち>に参加させていただきました。

25名限定というとても貴重なコンサート。素晴らしかったです。文字で表現するのが陳腐で
もったいないような春原さんの歌声。
歌?うた? 歌という言葉で思い描く世界とは違う、癒しのひと時にしばし時を忘れて引き
込まれてしまいました。
ヒルデガルド聖歌というのは12世紀ドイツの修道女ヒルでガルトによってつくられた聖歌の
数々だそうです。

ヨーロッパの片田舎の教会での聖歌コンサート、実は私は大好きでした。
いろいろなところを訪ね歩いた記憶と重ねながら、日本で今、こうして思わぬ機会に恵まれ
ましたこと、あの限られた場に自分がいるのがなんだか不思議な気持ちでした。
宗教と音楽というヒトが生み出した究極の世界は、悠久の時の流れとヒトの歩みのすばらしさ
を感じさせてくれるものです。

会場となった自由学園明日館は今年が設立100周年だそうです。
自由学園創立者の羽仁夫妻の依頼で、この建物を設計したのは、かの巨匠フランク・ロイド・
ライト。
100年の時空を感じさせない、今に残るライトの建築作品です。

ライトと言えば日本では旧帝国ホテルが有名ですが、この帝国ホテルの建物は1968年に築後
45年で取り壊されています。
愛知県犬山市の明治村にその玄関部分だけが移築されていますが、これを初めてみたときの
強烈な印象は今でも忘れられません。
子供心にも、もったいない の一言でした。移築といったら聞こえがいいけれど・・・
あまりに、もったいない。

一部といっても、壮大な本館のほんの玄関部だけ。後は瓦礫となって、ごみとなってしまった
のです。
それでも移築には莫大な費用が掛かったといわれています。
全くないよりは少しでも残っていた方がいい。
解体反対の声は移築の動きがあれば消されてしまったことでしょう。
なんだか、リハビリの孤児のオランウータンを残そうという懸命な努力と重なり、ヒトの愚か
さ、無力さの象徴のようで、こうした保存の在り方は個人的には疑問を持ちます。

さて、こうして「関東大震災を耐えたライトの建築をなぜ壊すのか」という反対運動を横目に、
1970年に新たに完成した現在の帝国ホテル本館ですが、なんとこちらも、すでに老朽化で今年
建て替えが発表されています。
世界に誇る木造建築、法隆寺とまでは申しませんが、50年でボロ、これではとても持続可能な
社会とは思えません。

ライトの帝国ホテルの残骸が移築された犬山の地で、その同じ年1968年に産声を上げた霊長類
研究所も今年解体が告げられました(実際に帝国ホテルが移築、完成したのはもっと後年です
が)。
スクラップ&ビルドで次々と壊される都市の建築物、そして個々人の家々。
さらにはちょっと意味が違いますが、研究所までもがなくなってしまう日本。
形あるもの、いずれは無くなると言いますが、なんだかヒトのやることは空しい話ばかりです。

やはり建物を生かすも殺すも、中身。そこに集う人々の心なのではないでしょうか。

今回の<響き合ういのち>のコンサート。会場の明日館の在り方とともに、本当に限りなく
つながり合う、つながり続ける<いのち>を感じたコンサートでした。
「1921年4月15日、未完成の教室に、26人の少女が集い、この学校は始まりました。 」と自由
学園のホームページにありましたが、いまでもその教室が生きている。
素晴らしいことですね。

保存には数々の困難があったことでしょう。
重要文化財となり、保存維持され、今も多くの人によって支えられ利用され続けている明日館。
12世紀から今に伝えられるヒルデガルト聖歌の悠久の響きを鑑賞するのには、なんとピッタリ
の場所だったことでしょう。

ライトは自由学園の理念に共鳴し、校舎の設計を引き受けたといいます。
その心が今でも形となって、建築として、創建の地に残っている。
建築家の仕事とは、建築とは何なのか。今でもこうして生きている建築と、壊されてしまった
華々しい商業ホテル。
目的はそれぞれで、それなりにそれなりですが、やはり、いのちの輝きは、立派さやお金だけ
ではないのだと、そんなことも改めて感じる夜でした。

夜の闇の中、暖かい光に浮かびあがる明日館の輝きは実に美しかったし、春原さんの歌声と
ともに、究極のいのちの響きを醸し出していました。
ありがとうございます。


(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 2
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』Part 2


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)
(事務局)
〒162-0065
東京都新宿区吉町8-23 富井ビル2F
TEL 03-5363-0170
FAX 03-3353-8521

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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