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第37回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」 その2      

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第1回 森の人 オランウータン
第2回 野生オランウータンの研究
第3回 ちょっと待って!エコな話はいい話?
第4回 外出自粛で考えること
第5回 緊急事態宣言
第6回 インドネシアとオランウータンと日本人
第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り
第8回 エネルギーのはなし
第9回 ご存知ですか、自然エネルギーのホントのこと
第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン
第11回 社会を考える -日本の霊長類学―
第12回 温泉に入るサル ~サルの文化的行動~
第13回 世界に知られたスノーモンキー
第14回 オランウータンいのちの学校
第15回 野生のオランウータンのくらし その1
第16回 野生のオランウータンのくらし その2 ~枝わたり~
第17回 野生のオランウータンのくらし その3 ~母子の橋渡し~
第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~
第19回 森林火災のあとの熱帯雨林
第20回 2021年の年頭に思うこと  ~GOTOの先~
第21回 科学の力
第22回 自然のバランスとスピード
第23回 オランウータンは何頭いますか?
第24回 オランウータンは何頭いますか? その2
第25回 インドネシアの大雨と大洪水
第26回 緊急事態宣言 再び
第27回 「自然」について考える
第28回 見守ることの大切さ ~キャンプ・カカップの取り組み~
第29回 オランウータンの長い子育て
第30回 森を残そう ~鎮守の森の意味 熱海伊豆山の土石流~
第31回 オリンピックの陰で
第32回 野生オランウータンの観察 その1 -年齢ってどのようにわかるの?-
第33回 野生オランウータンの観察 その2 長期間の観察の重要性
第34回 野生オランウータンの観察 その3 バユールの誕生
第35回 野生オランウータンの観察 その4 長期の追跡
第36回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」
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第37回 京大、霊長類研究所を事実上「解体」 その2


こんにちは、鈴木晃です。今日も引き続き京大霊長類研究所(霊長研)の件を書きます。

京都大学は霊長類研究所の解体をやめてください!

前回は上記の署名サイトを紹介しましたが、私自身は研究所の実態を知るフィールドの研究者
として、美辞麗句の宣伝ではない部分の問題点と常に闘いながら自らのフィールド調査を続けて
きた現実があり、実態を知っているだけに複雑な思いです。
研究所は器であり、問題は実際のその中身です。
ただ、何をおいても、現状の流れでは、問題が問題として正されず、表面的な金の流れの中で
「悪」がうやむやにされている。

不正に檻を作った松沢哲郎は特別教授を懲戒解雇(2020.11)となり、現在京大を訴えている
といいます。
私的流用はないなどといっているようですが、そんなことは論外。
研究者というもの、その人間性、信頼性にかかわる重大な事象で、実際研究所自体の存亡に
かかわる話となっているわけです。
流用しなければいいという話ではないのです。
そのへんもわかっていない者が文化功労者だという日本の現実を憂慮します。

松沢は霊長研の心理部門を大いに飛躍させ(たとされる)、私が所属した社会部門などフィー
ルド系の分野は縮小されてきました。
その一方で、研究所の人員を異動し、新たに京都に野生動物研究センターなるものをつくった
本人でもあります。
野生動物の保護を詠い、野生動物研究全般へ手を広げるのは自由ですが、口先だけでは世界の
野生をとりまく現状は厳しく、こうした安易な発想自体が世界の霊長類の研究の現場を窮地に
追い込んでいるのです。
今回、霊長研の一部はこのセンターに再編されるとのこと、神をも恐れぬ無知、というか無茶
苦茶ぶりです。

著名な研究者という権威の中で物が言いづらかったというのは現場の弁ですが、まさにこの
「物の言えない」体制づくりに加担した面々の罪は重い。
著名人、選ばれし者同士の持ちつ持たれつの仕組みづくり。
この点を改めなくては何も改善されないどころか、ますます悪い状態が、巧妙に継続していく
ことになるのです。

京都大学高等研究院特別教授というのは京大に4人しかいない、「特別な」教授職らしいです
が、2016年に総長肝いりでこの組織自体を作り、松沢を特別教授に任命したのは、ほかでも
ない山極寿一総長であり、彼は先述の野生動物研究センターの立案者の一人らしいです。
繰り返しますが、事の発端であるサルの檻の製作業者が京大と松沢らを訴えたのは2015年7月。
山極が京大総長に就任したのは、それ以前の2014年10月です。
提訴されていたにもかかわらず、大学として調査も行わないどころか放置し、逆にその間、
特別教授に任じた挙句の今日の事態です。

研究成果の還元だ、コンプライアンスだ、などと外野が騒ぐ中、研究所自体の本来の価値も
歴史的重みも忘れ去られ、今「霊長類研究所」という呼称だけが消されようとしています。
霊長類研究所は確かにそれほどたいした研究所ではなかったかもしれない。
しかし「よい研究所にしたい」という思いで一研究者として私もずいぶん悪戦苦闘してきま
した。
高名な先輩後輩諸氏のような華々しい成果はないかもしれない。
でもそれも一人の研究者としてのあり様であり、一野外研究者の姿であるのです。

今、世界の野生動物の棲みかである自然は非常に重い様々な問題を抱えています。
各国には各国の立場があり、法律があり、その中で私たちはひとつずつ積み重ねるしかないの
です。
金で動くものも多いかもしれないし、実際それが経済の現実ではありますが、金で動かない
ものも沢山ある。
自然の営みはそれを私たちに示しています。

研究のために法令尊守意識が・・・などということはあってはならないし、多くの研究者に
とってそんな説明は失礼でもあります。
今回の霊長研の解体は、名称をいじって、金を何とかしてという事務処理の話で終始し、すべて
をもみ消そうとしています。
研究はそんなものではないのです。騙されてはいけない。

自然を相手にする研究者までもが自然の中に金を持ち込み、金があれば何でもできると考える。
嘆かわしいことです。
そうした思考で安易に古きを廃してその後にいったい何が残るのか。
自然は、そして野生動物の研究は金だけでは動かない。
「われわれのファイトだ」と言ったのは今西先生でしたが、その思いが伝えることの意味を
伝え続けなくてはいけないと改めて思うのです。


(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)
(事務局)
〒162-0065
東京都新宿区吉町8-23 富井ビル2F
TEL 03-5363-0170
FAX 03-3353-8521

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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