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第30回 森を残そう ~鎮守の森の意味 熱海伊豆山の土石流~     

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第1回 森の人 オランウータン
第2回 野生オランウータンの研究
第3回 ちょっと待って!エコな話はいい話?
第4回 外出自粛で考えること
第5回 緊急事態宣言
第6回 インドネシアとオランウータンと日本人
第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り
第8回 エネルギーのはなし
第9回 ご存知ですか、自然エネルギーのホントのこと
第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン
第11回 社会を考える -日本の霊長類学―
第12回 温泉に入るサル ~サルの文化的行動~
第13回 世界に知られたスノーモンキー
第14回 オランウータンいのちの学校
第15回 野生のオランウータンのくらし その1
第16回 野生のオランウータンのくらし その2 ~枝わたり~
第17回 野生のオランウータンのくらし その3 ~母子の橋渡し~
第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~
第19回 森林火災のあとの熱帯雨林
第20回 2021年の年頭に思うこと  ~GOTOの先~
第21回 科学の力
第22回 自然のバランスとスピード
第23回 オランウータンは何頭いますか?
第24回 オランウータンは何頭いますか? その2
第25回 インドネシアの大雨と大洪水
第26回 緊急事態宣言 再び
第27回 「自然」について考える
第28回 見守ることの大切さ ~キャンプ・カカップの取り組み~
第29回 オランウータンの長い子育て
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第30回 森を残そう ~鎮守の森の意味 熱海伊豆山の土石流~


熱海伊豆山で起きた土石流災害。
あまりの惨状に言葉もありません。
いろいろな意味で無力感に襲われていますが、同時に、でも、だからこそ伝えていかなく
てはいけないという思いを新たにしています。
今日はちょっと長く書きます。

一見、オランウータンの森とは何の関係もないことに思われる方もいるかもしれませんが、
私からすれば、これは根っ子が同じこと、人々の無関心、想像力の欠如が生み出した結果にも
思えるのです。
私たちは「森を残そう」ということを訴えています。
そして、森を残そうというのは、単に木を植えるということではなく、森を残そうと思える人
を増やしていく、人の心を育てていくことなのだということを訴えています。
たとえ自分から遠く離れていることでも、感じる心、想像する心、気づく心。
一人一人があなたの身の回りの環境に本当の意味で関心を持つことがまずは第一歩なのです。

さて、今回の災害、発生当初から原因は盛り土だ、ソーラー発電だ、所有者は誰だと犯人探し
が盛んです。
一気に過熱して、炎上して忘れる。後には傷ついたものだけが残る。
でもこれはネット社会の非常に危険なところだと思います。
自然を相手に犯人探しをするのではなく、そこから学び、私たちヒトが変わらなくては何も
変わりません。
一時的に騒いで、しばらくすると忘れてしまっては何も変わらないように思います。

自然は部分で見ると同時に全体で見ることが大切です。
全体自然という視点で見れば、犯人探しをするまでもなく今回の災害の直接的原因は盛り土
であり、ソーラーを含めた山頂部の開発と考えるのが当然だと思います。
ここでは盛り土と表記していますが、これはマスコミでも取り上げられ、もうご存知と思い
ますが「残土」のことです。
残土の問題、残土の恐ろしさについてはここでは書ききれないので場を改めたいと思います。
今回の土砂災害は実は究極のごみ問題の一端でもあったわけです。

自然はヒトが考えるよりも、もっともっとスケールが大きい。
土木工学だ、防災学だ、工事の安全性だ、といくら頭で考えても、災害は忘れたころに、人の
想像を超えてやってくるわけです。
頭ではなく、もっともっと自然に対して、謙虚に、敏感にならなくてはいけないと思います。

そういう意味で、実はこの熱海の災害は決して他人事ではないということを書きたいと思い
ます。
うわべにごまかされて自然の悲鳴に気づかない、わたしたちひとりひとりへの警告と受け止め
るべきことなのです。


ネット社会は情報に溢れています。
地図サイトで「伊豆山」と検索するだけで簡単にこの空撮写真にたどり着くことができます。

手前の茶色い部分が尾根筋の、今はソーラーパネルが並んでいるところ。
上の真ん中部分、ここが尾根と尾根の間の谷間部で、その源頭部には今回ほとんど泥水化して
流れ下った盛り土といわれた残土捨て場の在りし日の様子がわかります。
注目していただきたいのは、そのちょっと横のお社マーク。
「本宮社」と書いてあります。
実はここ、「伊豆山神社」の本宮だそうです。
伊豆山神社はずっと下方、今回の土石流の流れ下った被害地の東の高台にあります。
その位置関係もちょっと調べればすぐわかります。この図の右下に位置します。

伊豆山神社は、どこかの小さな社ではなく、大変由緒正しき神社。
関八州総鎮護 伊豆山神社 https://izusanjinjya.jp/

「本殿は、相模灘を一望に望む、海抜170メートルほどの地点。境内は歌枕に名高い伊豆の
 御山、こごいの森の一部で、約40000坪の広さがあります。また、海抜380メートルほど
 の山中に本宮があります。
伊豆の御山は、日金山や岩戸山に連なり、伊豆・相模・駿河の
 三国にまたがる広大な神域の要です。」

源頼朝が源氏の再興を祈願し、北条政子との愛をはぐくんだ所として観光客の人気も高いそう
です。
そして「本宮社」への道中は、かつて修験道の行場であった山道。いまはハイキングコースに
なっていて、険しい場所もあるけれど山中徒歩1時間ほどで本宮社にたどり着けるそうです。
はやりのパワースポットということで、実際ここを訪れた人もたくさんいらっしゃるようです。
道中含め自然が美しい、素晴らしいところという写真や、紹介がインターネット上にはたくさん
ありました。

さて、まさかこの海抜380メートルほどの山中にある本宮社のすぐとなりが、問題の災害の発生
個所と同じ場所とはちょっと想像もつかないのではないでしょうか。
でも、まさにその場所が崩壊現場なのです。素晴らしいハイキングコースで、自然を満喫し、
パワーをいただいていたはずが、実はそのすぐとなりが残土捨て場や産廃捨て場だった。
大変険しい山道の先のはずが、実は反対側はすぐ近くまで道路があり、人家や別荘がある。
そしてそのとなりの本来神聖なるはずの谷間には残土が積まれ、隣の尾根筋は森が切られて
ソーラーパネルに置き換わっていた。でも誰もそのことに気づかない。

本当に気づかないのでしょうか。
日本の山中は実はこうした場所が数多いはずです。
日本の神社には鎮守の森というものがあります。
最近環境ブームもあり、何かと自然や環境教育が叫ばれ、鎮守の森を守ろう!ということもよく
言われ、いろいろな取り組みもなされています。
大切なことだと思います。
でも、正直、本当の意味で鎮守の森の深い意味を私たちは理解し、先人の思いを体感できている
のでしょうか。

皮肉なことに「静岡県 鎮守の森ガイドブック」という立派な環境教育用の資料があります。
ホームページもあります。
静岡県内50か所もの鎮守の森を紹介しているうちのまず1番目に伊豆山神社が出ています。
私は何とも苦々しい無念の思いでこれを見ています。
鎮守の森の大切さ、素晴らしさを形だけ説いても、それは溢れ流れる情報の一つにしかなって
いない。

本宮社があるのは下流の人里につながる深く細長い谷の源頭部です。
昔の人々は自然に敬意を払い、鎮守の森として社を建て、周辺一帯を広く神域、聖域として
守ってきたわけです。
ある意味ヒトにとって危険な場所を、守るべき神の場所として経験的によく分かっていたわけ
です。
本宮社を人里離れた山の中に残した意味を私たひとりひとりがもっと深く考えなくてはいけな
かったわけです。
山の中といいながら一方で本宮社は今や人家がある開けた場所となっています。
山の中のはずの地にダンプが走り、残土が持ち込まれ、発電所がつくられてもなお、気づか
ない。
現代に生きる私たちひとりひとりの鈍い心への警鐘です。

ところで、伊豆山神社のホームページにこんな一文が掲載されていました。


「大変残念な事ですがネット上で土石流の原因が当神社に関係しているかの間違った情報が
 流れています。これは全くの嘘偽りで、土石流発生の土地は神社の土地ではなく、又土地
 所有者も神社とは全く関係のない会社です。皆様には間違った情報を広げる事の無いよう
 にお願い申し上げます。    伊豆山神社宮司」


詳しくはわかりませんが、これも犯人探しのひとつでしょう。
犯人は誰と単純に考えるのではなく、自然を全体としてどうとらえるか。
今や社寺林は非常に限られたものです。
鎮守の森は神社だけの問題ではなく、日本人ひとりひとりの心の問題なのです。
「森を残そう」と思わなくては残らない、たとえ思ってもなかなか残らない。
実際の森は、鎮守の森でさえその多くが面積を狭められ、形だけのものになり、マンションが
建ったり、なくなったりしているわけです。

「関八州総鎮護」として岩戸山につながる御山と考え、お社を建て一帯を神域ととらえた先人
たち。
一方で私たちはお社のすぐ下の谷をゴミ捨て場にしても気づいてもいないわけです。
天罰がくだらないわけがない。
環境教育も結構ですが、国や県、行政はガイドブックを作ったら、まずは自分たちから教育する
必要があります。
盛り土やパネル設置の安全性などと、自然の一部の、そのまた一部しか見えない、全体自然を
見ようとしないヒト。
先人が持っていた壮大な自然観、思い描いた全体像に対し、鎮守の森を取り巻く今の状況は、
文字は同じでもそれを守ろうとするヒトの心が違いすぎるように思います。

森を残そう、残したい。やはりこの思いをひとりひとりが再認し、自分の身の回りをもう一度
見直す必要があると思うのです。


(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)
(事務局)
〒162-0065
東京都新宿区吉町8-23 富井ビル2F
TEL 03-5363-0170
FAX 03-3353-8521

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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