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第31回 オリンピックの陰で     

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第1回 森の人 オランウータン
第2回 野生オランウータンの研究
第3回 ちょっと待って!エコな話はいい話?
第4回 外出自粛で考えること
第5回 緊急事態宣言
第6回 インドネシアとオランウータンと日本人
第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り
第8回 エネルギーのはなし
第9回 ご存知ですか、自然エネルギーのホントのこと
第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン
第11回 社会を考える -日本の霊長類学―
第12回 温泉に入るサル ~サルの文化的行動~
第13回 世界に知られたスノーモンキー
第14回 オランウータンいのちの学校
第15回 野生のオランウータンのくらし その1
第16回 野生のオランウータンのくらし その2 ~枝わたり~
第17回 野生のオランウータンのくらし その3 ~母子の橋渡し~
第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~
第19回 森林火災のあとの熱帯雨林
第20回 2021年の年頭に思うこと  ~GOTOの先~
第21回 科学の力
第22回 自然のバランスとスピード
第23回 オランウータンは何頭いますか?
第24回 オランウータンは何頭いますか? その2
第25回 インドネシアの大雨と大洪水
第26回 緊急事態宣言 再び
第27回 「自然」について考える
第28回 見守ることの大切さ ~キャンプ・カカップの取り組み~
第29回 オランウータンの長い子育て
第30回 森を残そう ~鎮守の森の意味 熱海伊豆山の土石流~
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第31回 オリンピックの陰で


2021年7月23日、いろいろありましたが、とにかく盛大にオリンピックが開幕しました。
お金もかけ、時間もかけ、多くの方々が期待を込めて準備してきた舞台で、選び抜かれた
選手たちが力を出しあう。
そしてそれを連日華やかに宣伝するわけですから、開催まで賛否あったオリンピックです
が、結果的には大いに盛り上がることでしょう。

でも一歩その世界から離れ、現実に目を向けてみると、なかなか大変ですね。
何度目かの緊急事態宣言で、もはや人々の心にはその「緊急性」が全く伝わりませんが、
本当に怖いものは「緊急」なんていわずに、なんの前触れもなく突然やってくるものです。

オリンピックで盛り上がっている日本はさておき、インドネシアは7月になってのデルタ株
の急速拡大で大変なことになっています。
死者は累計8万人を超え、新規患者も1日当たり5万人。
死者も連日千人以上を記録。
当然医療体制は末期的状況で、病床は100%越えで病院にも入れずに亡くなる事態が相次い
でいます。

ふ~ん、インドネシア・・・と遠い国のことのように思われるかもしれませんが、実は
インドネシアにはビジネス関係の在留邦人がいっぱい。
連日のように邦人の死者数も増え、患者も拡大しており、大問題となっています。
23日時点で在留日本人の死者は17人。さらに邦人の入院待機者が数百人単位ということで、
14日の帰国特別便第1便を皮切りに連日の帰国ラッシュが続いています。

私たち研究者は昨年来すでにインドネシアへの滞在はもとより、入国さえできない状態
なのに、ビジネス関係には特別措置がなされているわけです。
コロナ禍とはいえ、生産ラインが止まってしまっては大変ですからね。
それにしても家族まで帰国せずに現地に今まで留まっている。
こうした事態は事前に十分に想定できたはずなのに、緊急にならないと手を打たない。
経済最優先とはいえ、いろいろな意味で日本の、世界のコロナ対策は穴だらけ。
先が恐ろしいです。

こうした中でオリンピックだけは開催されているわけです。
「多様性と調和」が今回のオリンピックのテーマの一つだそうですが、紆余曲折あって
建て替えられた国立競技場でさえ、「自然と調和した」と称しながら違法のインドネシア
産の合板がたくさん使われています。
様々な資源エネルギーもそうですが、使ってしまったからには最低限、その貴重さをひとり
ひとりがしっかりと自覚し、大切に、ありがたく思って使いつづけてほしい。

でも、実際には、違法木材の話など忘れ去られ、ほとんどの方が「自然と調和した」という
宣伝ばかりを目にするのでしょう。
いやいや、そんなことさえ気づかず、電力を使って真夜中にライトアップして開会式を行い、
それを「美しい」と思ってしまう。
多くのヒトがそんな不自然な状態を何とも思わなくなっているように思います。

かつて東京オリンピックの開会式といえば「観客席いっぱいの人、人、人とすがすがしい
青空に映える聖火台」のイメージでした。
今思えば真夜中に騒ぐより、よっぽど自然で健康的でした。
でもあの国立競技場はもうありません。
そして、新設された国立競技場は、森前会長テコ入れのラグビーワールドカップにも間に
合わず、本番のオリンピックも無観客。
国民が実際に会場に足を運べず、観客不在のテレビ中継の舞台セットとなってしまいました。
なんたることでしょう。

その新国立競技場ですが、宣伝だけなら

植栽について

・高中木本数:約1,000本(約70種)
・低木本数:約46,000本(約60種)
・地被類:約70種

国産木材の使用
軒庇(のきびさし)には47都道府県から森林認証を取得した木材を調達し、
スタジアムの方位に応じて配置しています。

とのことです。

私たちの会は「森を残そう」、そして、森を残していくためには森を残そうという心を
育てていくことがもっとも大事なのだということをいつも言っています。

即席で沢山植栽して、木を植えても、残念ながらそれは森を残していくことにはつながり
ません。
国産材の使用をうたいながら、一方で日本の森、日本の林業は担い手不足で補助金頼み。
結局は費用がかかりすぎるからと、輸入材を使うことになっているのです。
本来、森を残そうという取り組みは、地味で気長な、根底的な取り組みなのです。
形だけでは形だけで終わってしまいます。
日本の林業は、「祖父や父が植えた木を伐り、子や孫のために木を植える」という50年、
100年のサイクルで考え、代々人々が担ってきたものなのです。


そうした価値観、人の心を大切にしたい。
そういう心が育っていかなくてはオランウータンの森をはじめ、熱帯の森、日本の森、
地球の未来は本当にないと思います。
50年後、オリンピックの行われているこの新国立競技場はどのような姿となり、私たちに
何を残しているのでしょうか。
形あるものはなくなります。
まさにオリンピックのテーマ「未来への継承」という言葉を、レガシーなんて形だけの
カタカナではなく、もっともっと深く考えなくてはいけないときに来ていると思います。


(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)
(事務局)
〒162-0065
東京都新宿区吉町8-23 富井ビル2F
TEL 03-5363-0170
FAX 03-3353-8521

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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