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第1回 森の人 オランウータン
第2回 野生オランウータンの研究
第3回 ちょっと待って!エコな話はいい話?
第4回 外出自粛で考えること
第5回 緊急事態宣言
第6回 インドネシアとオランウータンと日本人
第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り
第8回 エネルギーのはなし
第9回 ご存知ですか、自然エネルギーのホントのこと
第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン
第11回 社会を考える -日本の霊長類学―
第12回 温泉に入るサル ~サルの文化的行動~
第13回 世界に知られたスノーモンキー
第14回 オランウータンいのちの学校
第15回 野生のオランウータンのくらし その1
第16回 野生のオランウータンのくらし その2 ~枝わたり~
第17回 野生のオランウータンのくらし その3 ~母子の橋渡し~
第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~
第19回 森林火災のあとの熱帯雨林
第20回 2021年の年頭に思うこと ~GOTOの先~
第21回 科学の力
第22回 自然のバランスとスピード
第23回 オランウータンは何頭いますか?
第24回 オランウータンは何頭いますか? その2
第25回 インドネシアの大雨と大洪水
第26回 緊急事態宣言 再び
第27回 「自然」について考える
第28回 見守ることの大切さ ~キャンプ・カカップの取り組み~
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第29回 オランウータンの長い子育て
こんにちは。
ありがたいことに、お話し会「オランウータンに、いつまでも熱帯の森を。」の第2弾を
企画していただきました。
7月17日ですが、なんと素敵なゲストがお二方もご登場くださいます。感謝、感謝です。
NGOアフリカ友の会の徳永瑞子さん。
看護師であり、助産師でもある徳永さんは1993年から中央アフリカに単身で渡り、以来
ずっとこの地で医療支援活動を行っている、すごい方です。
前回のお話し会ではオランウータンの子育てについて少しご紹介したのですが、その時に
「オランウータンは7-8年に一度しか子供を産まない」と申し上げましたところ、「それは
大変ですね。そんなに子供を産まないのならば、絶滅してしまう。」と、とても驚かれて
ご質問くださったのが徳永さんでした。
たくさんのヒトの子供の誕生にかかわってきた方ならではの着眼点で、私もびっくり。
そんなこと私は今まで考えてみたこともありませんでした。
確かにヒトは2、3歳離れた兄弟が普通で、年子も多々あります。
とくにアフリカなど多産な地域では、次々子供が生まれるわけで、「ひとりの子供を育て
上げるまでは次の子供を産まない」というオランウータンの母親は、なんとも非生産的に
みえます。
でも、実はこの堅実、着実な子育てこそが、オランウータンという種を支え、維持してきた、
もっとも生産的な営みなのです。
進化の歴史の中で、オランウータンという種がヒトと共通の祖先から分岐したのは700万年
から千数百万年前と考えられています。
ヒトが直立二足歩行し、ヒトの道を歩みだしたのが500万年前とすると、オランウータン
という種は、その倍近い長さのオランウータンの種としての歴史を持っているわけです。
一見すると、生産性が低く絶滅しそうにも思えるオランウータンですが、実はヒトを
はるかに超える長き歴史を、種として絶滅することなく今に繋いでいる大変興味深い種でも
あるわけです。
オランウータンの母親は7-8年のサイクルでしか子供を産みません。
では一生にどれくらいの数の子供を産むのでしょうか。
野生のオランウータンの寿命はわかりませんが、だいたいヒトと同じくらいですので、この
問いに答えることは、研究者にとっては非常に難しいことです。
でもこうした何気ない質問の数々が野外研究にとってはとても重要な課題なわけです。
長い観察の積み重ねしか、この問いに答えることはできません。
今後多くの母親の観察例が積み重なっていけばもっと明らかに、確かになっていくことも多い
と思います。
実は、オランウータンの母親は決して多産ではないけれど、一頭が着実に5~6頭の子供を
育てあげることがわかってきました。
私たちの研究地の森では、高齢になっても子育てをする逞しいオランウータンの母親がいます。
森林火災や、長年続く森の荒廃で、決して良い環境とは言えない中ですが、子供が死んだ例は
長い観察期間を通じてほとんどありません。
森林火災で焼けた後の森で子育てをする母親。
生まれ育った森で新たにお母さんとなった若い母親。
どの母親も着実に子育てを続けています。
日本人の出生率は1.4人を切っているわけですが、それにくらべて驚くべき生産性です。
私にとってはオランウータンという生き物と、その生命力は「絶滅」というものを微塵も感じ
させない、「強さ」と「たくましさ」を感じさせ続けてくれる存在なのです。
一方で、こうした長い歴史を持つオランウータンという種が今、絶滅の危機にあると言われて
います。
彼らを絶滅に追いやっていることの恐ろしさと罪深さを感じずにはいられません。
オランウータンはすみかの森があれば、だれの手を借りなくても生きていくことができるの
です。
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鈴木南水子さんお話し会 『オランウータンに、いつまでも熱帯の森を。』Part 2
2021年7月17日(土)
13:30~14:00受付
14:00~14:40講話 鈴木南水子さん
14:40~16:00講話 徳永瑞子さん
休憩
16:20~17:00 鼎談
特別ゲスト 山田征さんとともに。
参加費 4,000円
会 場 船井本社 大会議室
東京都港区芝 4-5-10 EDGE芝四丁目ビル8階
◆JR田町駅 三田口より徒歩6分
◆都営三田線 三田駅A9出口より徒歩3分
◆都営浅草線 三田駅A7出口より徒歩4分
※クリックすると拡大図になります。
お申込みは、こちらに
https://www.ningenclub.jp/blog01/archives/2021/05/_part_2717.html
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(次回へつづく)
プロフィール
鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。
鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』
(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)
(事務局)
〒162-0065
東京都新宿区吉町8-23 富井ビル2F
TEL 03-5363-0170
FAX 03-3353-8521
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メールアドレス mof.orangutan@gmail.com