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第27回 「自然」について考える      

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第1回 森の人 オランウータン
第2回 野生オランウータンの研究
第3回 ちょっと待って!エコな話はいい話?
第4回 外出自粛で考えること
第5回 緊急事態宣言
第6回 インドネシアとオランウータンと日本人
第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り
第8回 エネルギーのはなし
第9回 ご存知ですか、自然エネルギーのホントのこと
第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン
第11回 社会を考える -日本の霊長類学―
第12回 温泉に入るサル ~サルの文化的行動~
第13回 世界に知られたスノーモンキー
第14回 オランウータンいのちの学校
第15回 野生のオランウータンのくらし その1
第16回 野生のオランウータンのくらし その2 ~枝わたり~
第17回 野生のオランウータンのくらし その3 ~母子の橋渡し~
第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~
第19回 森林火災のあとの熱帯雨林
第20回 2021年の年頭に思うこと  ~GOTOの先~
第21回 科学の力
第22回 自然のバランスとスピード
第23回 オランウータンは何頭いますか?
第24回 オランウータンは何頭いますか? その2
第25回 インドネシアの大雨と大洪水
第26回 緊急事態宣言 再び
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第27回 「自然」について考える

先日にんげんクラブの会報誌の最新号、6月号を拝見しました。
実に興味深い記事がたくさんで、こういう会報誌の読者の方が、私のこのブログ記事も
読んでくださっているのかなと思いつつ、感想がてら今日は少し書きたいと思います。

取り上げるのは 連載49 Kan. さんに訊く。
まずは「人間が生み出した都会の人工物もすべて自然」というタイトルに???でしたが、
お話を読んでみると、まさにこれ、私も言いたいこと。
ぜひこの場でもあらためてご紹介したいので、会報読者の方には重複しますが、紹介させて
いください。

今、自然で空気の美味しい田舎に住む、田舎で子育てをするということが流行ってきて
いますが?という質問で始まったインタビューですが、これに対し、頭でみなさんが描く
「自然」というのは何ですかという、非常に根本的なところにもどってお話をされています。
以下「」内は抜き書きですが、前後転倒ありの抜粋要約ご容赦ください。


「壮大な自然の中に行ってきました」というので話を聞くと、実はそこはすごい産業廃棄物
置き場だった。現実を知らないで田舎に行って、すごい自然だなあと感動して帰ってくる。
東京に一極集中し、田舎がゴミ捨て場になっているのに、それを人は自然という、これは
悪循環。手付かずの自然なんて、本当にちょっとしかない。自然で空気がおいしいと思って
いるのは頭だけ。木が生えていれば自然だと信じているのは、大きな間違い。田舎にも問題が
いろいろあるわけです。自然がいい、自然がいいとみんなは言うけれど、田舎に行くほど
痛々しい自然がいっぱいあります。

「木々の悲鳴、海の悲鳴、そういうのをキャッチすることが、自然ということです。健やか
とはそういうことです。」

「便利になっていく陰で、廃棄物はいっぱい出てくるわけです。それをどうにかしなければ
いけないという問題は、すごく大事なことではないでしょうか。関心を持てば、いろいろな
ことを知ることができる時代です。(中略)個人にできることは微々たることだけど、
やっぱり、いい、悪い、ということを超えて、自分にできることをやっていくことが大事
でしょう。自分でただ情報だけ、コマーシャルのいいところだけを聞いて、そこに乗っかっ
ていくということだけをやって行くと、何も知らない所で、見当違いなことをやっている
ということになります。」

「受け継いだものが最悪だからここより良いところに行けばいい、ということだけやって
いたら、日本列島の自然は滅んでしまいますよ。」

だから、一人一人が目を覚まし、安易に他を求めるのではなく、受け継いだものをちゃんと
とらえ、ちゃんとしたところに気づいて活動してほしい。

みなさん。どう思われますか?
「」内は原文そのままですが、私は本当に同感です。
田舎にいるから自然の中にいると思っているのは思い込みです。
たとえどこにいようと「自然を感じる、自然を感じられる」心、私は「感性」といいますが、
この心がなくてはいったい何を「自然」と思っていることやら。
ただただコマーシャルの「自然」のイメージに操られ、本当の自然は無くなっていく一方です。

それだけ「自然」のことを考えないで生活している人が増えているということでしょう。
そういう意味でも、与えられたあなた自身の、受け継いだ身の回りの自然をどうとらえるのか
が、まずは大切だと思います。
田舎に行かなくても、秘境に行かなくても、都会の人工物でも、まずは自分の身の回りのこと
から、自然を考え感じることです。いいことばかりではない、そこが大切なのです。

目を覚ませと表現されていますが、眼をあいていても、実際に見ても、気づかない人が
多すぎる。
百聞は一見に如かず という言葉がありますが、現代はあまりに簡単にあらゆる情報があり、
実際にその場に行くことも簡単なので、ただただ田舎に行って、ただただ世界中の秘境を
観光して、「自然」を見てもどうなのでしょうか。
実際に目で見ても、その場にいても、その裏まで感じ取れないヒトがあまりに増えている
ように思えます。

自然にやさしい国立競技場(ブログ第3回)、自然エネルギー(第9回)等々、私にとっては
「自然」という言葉は、大いなるまやかしの言葉。
「自然」という言葉をつければ、自称「自然が好き」という人々の絶大なる共感を呼び、深く
考えることなく、なんとなくいいかな、と思ってしまう。

木があって、緑があったら「自然」ではないのです。今、都会の再開発地域は、ある意味
「緑でいっぱい」です。
ビルの谷間に、ビルの屋上に、壁面に、人によって管理された緑がいっぱいです。
でもヒトの都合で管理され、剪定される木々は、根を十分に張ることもできず、大風が吹けば
倒れ、消毒しなくては害虫が発生する。
こうした不自然な自然を「自然」と勘違いし、自然が好い悪い、好き嫌いという人が増え
ても、これは大変おかしな、おそろしい世界です。

再開発の裏側で、田舎の山々は削られ、跡地に建設残土が運び込まれ、太陽光パネルが並べ
られる。
こうしたパネルもごみとなっていく。
熱帯の森は建設用合板生産のために切り開かれ、マイクロプラスチックごみが人知れず運び
込まれてくる。
目を覚まさなくてはいけないと私も思います。

現実の地球の自然は大変危機的状況にあるわけです。
熱帯雨林に暮らすオランウータンの森も危機的状況ですが、足元の日本の国土も実は大量消費
社会という同じ土台の上にあるわけです。
表面だけを見ていたら豊かな自然に見えるかもしれない。
でも豊かな自然ほど隠された闇は深いわけです。
オランウータンは鳴き声もだしませんが、その存在は常に私に「自然」の裏側を考えさせて
くれるわけです。


(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)
(事務局)
〒162-0065
東京都新宿区吉町8-23 富井ビル2F
TEL 03-5363-0170
FAX 03-3353-8521

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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