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第24回 オランウータンは何頭いますか? その2      

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第1回 森の人 オランウータン
第2回 野生オランウータンの研究
第3回 ちょっと待って!エコな話はいい話?
第4回 外出自粛で考えること
第5回 緊急事態宣言
第6回 インドネシアとオランウータンと日本人
第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り
第8回 エネルギーのはなし
第9回 ご存知ですか、自然エネルギーのホントのこと
第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン
第11回 社会を考える -日本の霊長類学―
第12回 温泉に入るサル ~サルの文化的行動~
第13回 世界に知られたスノーモンキー
第14回 オランウータンいのちの学校
第15回 野生のオランウータンのくらし その1
第16回 野生のオランウータンのくらし その2 ~枝わたり~
第17回 野生のオランウータンのくらし その3 ~母子の橋渡し~
第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~
第19回 森林火災のあとの熱帯雨林
第20回 2021年の年頭に思うこと  ~GOTOの先~
第21回 科学の力
第22回 自然のバランスとスピード
第23回 オランウータンは何頭いますか?
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第24回 オランウータンは何頭いますか? その2

野生の生き物の数を知ろうとすることは非常に難しいことなのだという話の続きです。
まずは少し昔の話になりますがオランウータンの生息数に関する面白い話を紹介しましょう。
面白いといってもこの話は非常に示唆的な話で、一般に流布される『数』や『データ』という
ものをどのように捉えたらいいのか参考になる話だと思います。

2003年1月に、国際自然保護連合(IUCN)の呼びかけでオランウータン保護の会議がインド
ネシアのジャカルタで開かれました。
この時の会議は、オランウータンが絶滅に瀕していて、全生息数が1万~1万5千頭に減って
しまっているという前触れで開かれたものでした。
しかし、意外にも結論は『オランウータンは65,000頭生息している』ということにまとまり、
この数字が公式なものとして発表されてしまったのです。

現在でもこの数字が『オランウータンの生息数』としてマスコミなどでも報道されているもと
になっている数字の一つに思いますが、とにかくオランウータンの数に関しては、その数を
知ろうという純然たる目的よりも先に「絶滅の危機」「○○パーセント減った」ということを
アピールしたいという意図なのか、とにかく根拠不明の数字がよく出回ります。

ましてこの時の会議は国際自然保護連合の呼びかけという、それなりの影響力を持つ会議
だったわけですが、こうした数字は権威づけられればつけられるほど、現実とはかけ離れた
ものになるようです。
会議の冒頭、奇妙な約束事が交わされました。
それは、「この会議で出されたデータは、お互い博士(研究者)が出したものであるから、
批判しあわずに、データを尊重する事から始めよう」というものでした。

結果としてこの時出された6,5000頭という数は、いわば、研究者による各研究地での数の
寄せ集めで出来上がった数字とも言えるのでした。
オランウータンは、森の中でかなりの距離を移動します。
巣の数も、オランウータンの個体数とパラレルではなく、生息の指標となるだけです。
1日にいくつも巣を作るときもあれば、夕方古い巣に入って、そのまま寝てしまうことも
あります。

しかし数字を見る限り、こうした野生オランウータンの生態の実情がどこまで把握されて
いるのか、はなはだ疑問です。
数字が出される中で何ら議論を経ることなく、ただお互いの研究内容を尊重しようという
きれいごとで片づけられてしまったのです。
こうしたことは実はよくあることで、オランウータンの生態を知れば知るほど、『生息数』
というものを割り出す難しさと問題点を痛感しています。

オランウータンの生息数が多ければ、それだけその地域が大切に考えられ、予算がとりやすい、
という現実がこの不正確な数を生み出しているとも言えるのです。
重要なことは、野生オランウータンの数の問題、とくに数の増減に関する問題を議論するため
には、そうした議論ができるだけの観察が実際に各地で行われているかということなのですが、
残念ながらこうした点においてオランウータン研究はまだまだ経験の積み重ねが少ないのです。

今世紀初めには20万頭いたとも、30万頭いたともいわれていますが、こうした数字はあくまで
推定値です。
1990年をピークに激減などとも解説されますが、1990年時点でどのような研究が行われていた
か、実際を知っている人が書いているわけでもありません。
この時出回っていた数字自体がすでにかなり水増しされた数値であり、そもそも問題なのです。
いつの時代もただただ数字だけが独り歩きしているのです。

正確な生息数を出すための研究が行われていないという話をしましたが、これはお金と時間の
かかる極めて大変なことなのです。
一研究者でできるようなことではありません。
オランウータンの保護を考えるのなら、本当は国家規模でそうしたプロジェクトの必要性を
訴えるのが理想ですが、国はとてもそんな状況にはありません。
国際自然保護連合やWWFのような保護を訴える機関に期待しますが、保護の問題を言っている
割に、研究者のこうした声にはあまり関心を払っていません。

「数」などという、一見確かそうでいて、実はあやふやなものを探るためには、それをきちんと
認識したうえで、あらゆる角度から客観的に自然をとらえる必要があるのです。
まずは研究者自身が一定の森を見る目、オランウータンを見る目を持ち、スタッフはもとより、
そうした目を持つ人の層を増やす、一歩一歩の積み重ね、まさに「経験」が必要なのです。

自然全体を見る。
そうした下地がなくては全体を論じても何を議論しているかはなはだ疑問です。
でも、そんな面倒くさいことを言う人は少数派です。私たちのオランウータンの研究はこう
した、国際的無理解とも言える状態の中でこの30年以上独力で続けられてきました。
この間、東カリマンタン全域のオランウータンの生息数の算定を何度かしています。
が、この話はまた改めてしたいと思います。

6万頭だ、1万頭だと言って、だれも自然を見ないで騒いでいるうちに、実は本当の意味で
野生のオランウータンというのはもうほとんどいなくなっているのかもしれない。
これがごくごく最近の鈴木先生の切実な懸念であり、大いなる危機感なのです。


(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』
【DVD】鈴木南水子さん お話し会 『オランウータンに、 いつまでも熱帯の森を。』


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)
(事務局)
〒162-0065
東京都新宿区吉町8-23 富井ビル2F
TEL 03-5363-0170
FAX 03-3353-8521

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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