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第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~   

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第1回 森の人 オランウータン
第2回 野生オランウータンの研究
第3回 ちょっと待って!エコな話はいい話?
第4回 外出自粛で考えること
第5回 緊急事態宣言
第6回 インドネシアとオランウータンと日本人
第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り
第8回 エネルギーのはなし
第9回 ご存知ですか、自然エネルギーのホントのこと
第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン
第11回 社会を考える -日本の霊長類学―
第12回 温泉に入るサル ~サルの文化的行動~
第13回 世界に知られたスノーモンキー
第14回 オランウータンいのちの学校
第15回 野生のオランウータンのくらし その1
第16回 野生のオランウータンのくらし その2 ~枝わたり~
第17回 野生のオランウータンのくらし その3 ~母子の橋渡し~
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第18回 熱帯雨林とバランス ~森林火災~

野生オランウータンのくらしということで少し紹介してきましたが、今日はオランウータンが
暮らしている森について書こうと思います。
そもそも野生のオランウータンのくらしというのは、熱帯の森とともにあり、熱帯の森なく
して彼らの生活は成り立ちません。
まさにオランウータンの存在そのものが熱帯雨林の象徴であると私は思います。

私たち、オランウータンと熱帯雨林の会は「オランウータンに熱帯の森を」ということで
活動していますが、これはオランウータンという生き物を守ればいいという単なる動物保護
の話ではないのです。
オランウータンという生き物が象徴する豊かな熱帯の森、そして様々な生き物がくらす地球、
自然環境というものの価値をもっと多面的に、そして永続的にヒトは考えなくてはいけない、
そういう思いから活動しているわけです。

さてこの熱帯雨林ですが、インドネシア、カリマンタン島の熱帯雨林は近年数度にわたる
大規模な森林火災で大きな被害を受けました。
こう書いてしまうと、最近は森林火災のニュースもよくあるし、「ああ、そうなんだ。」
と読み流されるかもしれませんが、これは実は大事件なのです。
本来、熱帯の森は、湿度が高く、火事で焼けることはないといわれてきました。
ところがこの熱帯雨林が人類史上初めて火が入り燃えてしまったのです。
これが1982-83年に起こったカリマンタン島の大火災でした。
九州ほどの面積がこの時の火災で失われました。

熱帯雨林は熱帯降雨林、熱帯多雨林ともいいますが、本来は文字どおり「熱帯の雨の林」
なのです。
赤道直下の強い太陽光は水蒸気の発生を促し、上昇気流を生み出します。
森の木々から蒸散された多量の水蒸気は、この上昇気流によって空へおくられ、雲となり
大量の雨を降らすのです。
そしてその雨が豊かな熱帯の森を育んできたわけです。
この自然の循環とバランスが崩れてしまった結果が熱帯雨林の火災につながるわけです。
熱帯の自然の循環が狂うということ、これは、当然地球規模に影響を与えるはずのことで
あり、本当は大事件なのです。

本来は湿潤なはずの熱帯雨林の「乾燥化」。これが熱帯雨林火災の元凶です。
鈴木先生はかなり以前から「砂漠化の問題は砂漠だけの話ではない」と言っておられます。
先生がオランウータンの研究を開始された当時でも、すでに熱帯雨林の問題は盛んに
言われていたのですが、結局ヒトは過去を顧みることなく、森の乾燥化どころか、今は
森自体がなくなっています。

社会だの、科学だのの発展にも関わらず、その後何十年たっても相変わらず熱帯雨林の問題
はスローガンばかりで本質は昔のまま放置されているように思われます。
バランスというものは本当に難しいもので、ヒトの得意な頭で考えてできるものとは違う
らしい、というか全く逆さまに位置するように思われます。
ヒトが考えれば考えるほどバランスが悪くなっていることが多々あります。

熱帯雨林の火災というと最近ではアマゾンが知られ、焼き畑がその原因、人が火をつけた
などと言われていますが、本来の湿潤な森林環境下であれば、たとえ火をつけたとしても
そうそう燃え広がるものではないのです。
その点は中緯度、高緯度地域の、たとえばアメリカなどの油分の多い針葉樹林帯に燃え広がる
森林火災とは状況が全く異なるはずなのです。
熱帯雨林は雨が多いので落葉はすぐに分解されてしまいます。
分解がはやく表土が薄いのも熱帯雨林の特徴です。
ところが森の中の乾燥が進むと落ち葉が積もってしまい、そこに火が入り林床をどんどん
広がっていきます。
オランウータンのくらすクタイの森もこうして1983年に火が入ってしまったのです。

今や熱帯雨林は毎年のように燃えています。
これは本当に地球のバランスが崩れてしまった現れ、私たちヒトへの自然からの警告なのです。
ブラジルの大統領が悪い、焼き畑民が悪いといったことはある意味表面的な原因に過ぎないと
思います。
政治は確かに大きな力を持っています。
でもその政治を動かしているのは、経済であり、商業であり、私たち一人一人なのです。
自然軽視、地球軽視で「知らなかった、忘れっちゃった、そうだったの?」と言っていて
いいのでしょうか。

1983年の人類史上初の熱帯雨林の火災は木材輸出のための森林の過剰伐採の影響で、森の
中の乾燥化が進んだことが大きな原因のひとつだと私たちは考えています。
一度崩れてしまった自然のバランスを取り戻すことがどんなに不可能なことかは、その後
も相次ぐ森林火災が実証しています。

言うまでもありませんが、実は日本は1960年代、70年代を通してこの大量の熱帯木材を輸入
していた当事者です。
でも、そんなことは今や半世紀前のこと。
そうだったの?といった程度の認識ではないでしょうか。
建築業界は、そして私たち一般の人も、新築建売大好き、「家」の使い捨て文化を築いて
います。
当時日本に大量に輸入された熱帯の木材は、30年寿命といわれるような今の日本の住宅事情の
中で、すでに「ゴミ」となってしまっているのでしょうか。

「知らなかった」で済ませるには、あまりに重すぎます。太古の昔から育まれてきた熱帯雨林。
自然のバランスの中で生み出されてきた貴重な自然の恵みをいただいているという最低限の
認識すら私たちユーザーにはないのです。
いま盛んに脱石炭が叫ばれています。よいことだとは思います。
でも「石炭」を使ってきた過去にフタを閉め、忘れてしまって前を向くだけではだめだ
ということを強く訴えたいのです。

つづく


(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)
(事務局)
〒162-0065
東京都新宿区吉町8-23 富井ビル2F
TEL 03-5363-0170
FAX 03-3353-8521

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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