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第13回 世界に知られたスノーモンキー   

みなさまいかがお過ごしですか。鈴木晃です。

暑さ慣れしているはずの私にも暑い夏なので、勝手にブログも夏休みにしてしまいました。

さて、今日のタイトルはSNOW MONKEY スノーモンキー。
前回に引き続き温泉ザルの話です。
このSNOW MONKEYという英語の呼び方、夏に聴くと何やら涼しげですが一般にニホンザル
全般を指す呼称です。
ニホンザルは世界最北限のサルといわれていますが、雪の中でも暮らしています。
こうした雪国に暮らすサルは世界でも珍しい存在で、SNOW MONKEYというと日本にいる
サルのことを指す言葉になっているわけです。

前回ご紹介した地獄谷の温泉に入るニホンザル、私が最初に見つけたといいますか、
私が見ていた1962年当時はサルが温泉に入るというこの行動は、偶然コザルが温泉に
落ちたことから始まった新しい習慣で、まだ広く群れに知られる前のことでした。
ですから温泉に入るサルもわずかでした。その後この習慣が群れ全体に広がり、
今では温泉ザルのイメージが SNOW MONKEY、スノーモンキーとして、とても有名に
なっているようです

とくにスノーモンキーは日本以上に世界的に有名で、多くの外国人観光客が地獄谷温泉を
訪れるといいます。
ここが正式に地獄谷野猿公苑となった1964年以降、私はアフリカ、インドネシアと海外
での調査が多忙になり、そんなに有名になってからの地獄谷温泉、そして後楽館にも
行ったことがなく、なんだか不思議な気がします。
後楽館の竹節春枝さんには当時本当にお世話になったものです。

さて、なぜこの温泉ザルが有名になったかというと実はアメリカの著名な写真誌LIFEの
表紙に、この温泉ザルの写真が取り上げられたのがきっかけだそうです。
このことも私はあまり知らなかったので、びっくりすると同時に当時のことがいろいろと
思い出されました。
実はこのLIFEの写真取材の際に、LIFEのカメラマンのコーレントミースター 
Co Rentmeesterを地獄谷温泉に案内したのも私でした。
温泉ザルの発見者ということもあり、私に連絡してきたのです。
この時のLIFEは1970年3月に発行されたのでもう50年も前の話です。

当時は私も若かったのですが、レントミースターも若く、彼はボート選手でオリンピックの
オランダ代表でしたが、その後転身して写真家になり名声を得、間もなくベトナム戦争を
撮ってと、そんな話をしながら後楽館に泊まった時のことを思い出します。
今でこそ、この時の写真がきっかけといいますが、当時は取材に協力してくれる人は誰も
いなくて、彼は何台ものカメラを自分一人で担ぎあげ、私も彼の大きなケースに入った
機材を持って、降りしきる雪の中を後楽館まで歩いたものです。

彼を案内した1970年にはすでにサルたちの中では温泉に入るという習慣が定着していました。
私が見た当初はコザルだけの楽しみだったのが、この時には雪の中で行列を作って山から
下りてくると、長老のメスザルが真っ先に露天風呂を目指して入っていきました。
寒い日は一日中でも暖かい露天風呂につかることを彼女たちはすでに覚えこんでいました。

LIFEの表紙を飾ったのは温泉ザルでしたが、取材自体は世界でも珍しい雪の中に暮らす
日本のサルを撮影したいというものでした。
ですから地獄谷の取材の前には下北半島も案内しました。
特集写真の中には吹雪の中、身を寄せ合うニホンザルの親子たちの何とも素晴らしい写真も
あるのですが、これは下北で撮影したものです。
先にも話しましたが、先進諸国でもサルが生息するのは日本だけで、欧米人にとっては
ニホンザルというのは珍しい存在です。
とくにサルは暖かい場所の生き物と思われていたので、雪の中に暮らす日本のサルは
SNOW MONKEYとして、非常に珍しい存在として知られるようになっていったわけです。

レントミースターはLIFEの専属カメラマンとはいえ、まだ動物写真の経験は少なく何を
撮影するかは案内の私に任されていました。
私もよい写真を撮ってもらいたいと、いろいろとよさそうな場面を彼に話すわけです。
すると、「ではその場面を撮りたい、案内してください。」といわれるので、私は彼が
これ、といった場面が撮れそうな場所の心当たりに連れていくのです。

レントミースターはその後も数多くの有名な写真を撮ったカメラマンですが、とにかく
撮影しだすと、その集中力と熱心さが際立っていました。
雪が降ろうが風が吹こうが、零下の凍りつくような中で一心不乱にシャッターを押していた
姿が忘れられません。赤ん坊を背負ったまま氷の川の上をジャンプする母ザル。
この躍動感あふれる姿を撮りたいと、これまた時間を忘れてシャッターを切っていました。

たくさんのサルが温泉に浸かっているところを撮りたいとか、とにかく雪の中のサル=
SNOW MONKEY スノーモンキーのイメージはこのときの彼の思いが生み出したものでも
あります。
温泉に長く浸かっているとサルの頭にだんだんと雪が積もるのですが、あまり積もりすぎても
いない、でも雪のかけらが適度に寒さを感じさせる、そんな威厳あるオスザルの温泉写真が
結局、表紙写真に選ばれたようです。


(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)
(事務局)
〒162-0065
東京都新宿区吉町8-23 富井ビル2F
TEL 03-5363-0170
FAX 03-3353-8521

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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