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第10回 霊長類学、霊長類研究とオランウータン   

エネルギーの話が続きましたので、今日から少し
オランウータンの話をしたいと思います。

まず、オランウータンは「霊長類」という仲間に
属します。
私たちが一般に「サル」と呼んでいる仲間のことを
「霊長類」と言います。
霊長類の中でもヒトのように「尻尾(しっぽ)」
がない仲間を類人猿といい、文字どおり
「ヒトの類縁のサル」というわけで、彼らは
進化の歴史の中で私たちヒトに
最も近い生き物です。
日本語ではあまり区別せずに漠然とサルと言ったり
しますが、類人猿は、英語ではエイプ(Ape)
と呼ばれ、尾のあるサル、モンキー(Monkey)
とは明確に区別されています。

その類人猿の中でもとくに、アフリカに暮らす
チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、そしてアジアに
暮らすオランウータンは大型類人猿と呼ばれます。
ヒトに最も近い仲間である大型類人猿ですから、
彼らを知ることは結局私たちヒトが何かという
ことを明らかにするために欠かせないことでも
あるのです。
霊長類学はヒトを知るための学問でもあるわけです。

そういうわけで父は、アフリカのチンパンジー、
そして研究の場を東南アジアのオランウータン
と移しながら、半世紀以上にわたってこれら
大型類人猿の野生の暮らしを見てきました。
以下、「夕陽を見つめるチンパンジー」という
本のあとがきから引用したいと思います。
父はさらっと書いていますが、この一文の、
とくに「高温多湿」という部分が後の私には
印象的でした。
何しろ熱帯雨林の中で暮らすことが父には少しも
苦になっていない、子供のころからずっと父は
喜び勇んでインドネシアに行っているように
私は感じていましたから。 


この間の大半の期間を、私は熱帯雨林の中で
過ごしてきた。
特に後半のオランウータンを観察した現地は、
その高温多湿の度合いにおいて、アフリカの
森の比ではなかった。
ヒトの寿命にせまる長寿を保つ大型類人猿の
社会を覗きみるためには、どうしても、
彼らの成長の過程と、その行く末を辿る
必要があり、長期にわたる継続的な研究が
不可欠なのは言うまでもない。
海外でのそのような研究活動を遂行していく上で、
日本の学術体制・社会の理解は、必ずしも
欧米の状態に比して、恵まれているとは
いえない。
 調査は主として、文部省の科学研究費の
海外の部で行われてきたのだが、単年度ごとの
審査である以上、長期の継続の保証はない。
 日本人研究者によるアフリカでの類人猿調査は、
当初、京都大学類人猿学術調査隊として、
今西錦司先生というたぐいまれなる指導者の
構想の下に取り組まれた。
著者の最初のアフリカ行であった1964年は、
先生の最後のアフリカ訪問の年であった。
 ~中略~
 オランウータンに対象を移してからは、
私は全く細々とした財源で調査を続けている。
アフリカでの研究には、毎年いくつもの研究費の
申請が通っているのに、東南アジアのこの分野
ではなかなか申請課題が通過しないという現状が
続いている。
「鈴木晃 丸善新書」


これはかなり前に書かれた本ですが、その後も、
今に至るまで研究フィールドを維持していくために
私たちは大変な努力を続けています。
今西先生が打ち立てた日本の霊長類学はフィールド
(現場)の観察を重視し、「個」ではなく「社会」を
みるというところに、当初はそのユニークな特徴が
あったわけです。
父は学術調査隊、京都大学霊長類研究所とその後も
ずっと類人猿の社会構造の研究に従事してきました。
昨今、5億円超しの研究費不正支出でニュースに
なっている京都大学霊長類研究所ですが、
父は創設時からの所属研究者であります。
フィールドという視点からすれば、そもそも、
「飼育用のおり」に5億円もの膨大な予算が
おりるということ自体が全くおかしな話であり、
問題です。
そういう構造の中で行われてきた日本の
霊長類研究自体の「かべ」をつくづくと感じます。

自然の中での観察が重要といっても、実際は
短期間に研究者が論文を何篇も書くことが
求められ、それが成果と評価される状況では
真の「フィールド研究」など、なかなか理解
されないわけです。
まして野生のオランウータンはヒト並みの
寿命を持つのではないかと考えられます。
父は1983年以来、ずっと彼らを追っていますが、
当時の若者(オランウータン)はいまもまだ
若いと笑います。
その寿命(誕生から死)さえもが自然の観察の中で
記録することは大変なことなのです。

フィールド研究という言葉は表面的に誰もが
語りますが、地道な、そして地味な研究への
理解は本当の意味ではまったく進みません。
先の研究費不正は5億とも20億とも言われ、
しかも大権威といわれる研究所のトップが
先導するというものです。
メディアでは世界をリードしてきた日本の
霊長類学という言葉がつかわれますが、
現場を見ているものとしては何とも言い難い
思いです。
どの時代も、成果の見えない
父のオランウータン研究はまったくおりの外、
そもそも研究開始当初からかべが
立ちはだかっていました。
本当は、おりを造るよりかべを壊さなくては
いけない状況なのです。

ということで次回からは父が書きます。

(次回へつづく)

オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)
(事務局)
〒162-0065
東京都新宿区吉町8-23 富井ビル2F
TEL 03-5363-0170
FAX 03-3353-8521

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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