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第7回 オランウータンの棲みかと石炭の露天掘り   

世界中で東南アジアの熱帯雨林にしか生息していないオランウータン。
赤道直下の熱帯雨林が棲みかというと、みなさんはどんなイメージを
お持ちになられますか?どこまでもうっそうとしたジャングルというと、
森が無限に続くかのように思ってしまいますが、実はこの熱帯雨林自体が
地球上でもごく限られた場所でしかないのです。


そもそも赤道直下って、多くが「海」の上。
陸地が広がっているのは南米のアマゾン川流域、アフリカ大陸、
そして東南アジアのスマトラ島とボルネオ島ぐらいしかないのです。
映像などでは「生き物の宝庫」なんて紹介され、全世界の生物種の
半数以上が熱帯雨林に生息しているとも言われるなど、地球の、
そして自然の豊かさを象徴する熱帯雨林。
まるで未踏の森が無尽蔵、無限に広がるかのように
思ってしまいますが、実はある意味限られた自然なのです。


さて、そんなオランウータンの棲みかですが、
いまや人類未踏の地どころか大変な開発にさらされています。
熱帯材の大量伐採、地下の資源エネルギーの開発、
パームヤシ(油ヤシ)のプランテーション等々、
熱帯雨林の開発は拡大の一途です。
とくに私たちの研究地はインドネシアが誇る良質な石炭の
産地として有名で、この石炭の露天掘りは1990年代から
本格化し、いまや世界屈指の炭田となっています。


OrangutanResidence.jpg


でも、そうはいっても日本からは遠いし、
ちょっと関係ないよね・・・
と思っていませんか。
日本でこの話をしても長い間 
「えっ石炭?もう日本では使ってないでしょ。」 
とおっしゃる方ばかりでした。
石炭というと、黒い煙がもくもくというイメージで、
日本人にとっては一時代前のことと思い込まれているようです。
原発の事故もあり、日本の方も最近は、日本人が
石炭火力を主力電力源としてずっと使ってきた、
いまも使い続けているということをようやく少し実感
しはじめたかなという程度。石炭のおかげ、
石炭の恩恵などということを考えている人は
ほとんどいないのではないでしょうか。


ところが実際はこのオランウータンの森からの石炭の多くは
日本に来ているのです。必ずしも電力供給のためだけではなく、
品質の良い石炭は製鉄原料としても日本の基幹産業を
支えるためにはなくてはならないものだったのです。
でも、ほとんどの日本人はそんなことは全く知りませんし、
考えてもみない、考えたくないのです。
こうして30年近く、オランウータンの森の石炭は使っている人に
ありがたいと感謝されることもなく掘り続けられ、日本に
運ばれてきていたのです。
けっして、どこか遠くの、日本人には関係のない話では
なかったのです。実はオランウータンの森の窮境には
私たちは大きな責任があったのです。


私たちの研究は文字通り
「石炭の露天掘りの隣でくらす野生のオランウータン」と
ともに歩んできたものであり、その生息地を何とか守ろうと
大変な苦労を重ねてきました。いや、正確にはオランウータンは
露天掘りの隣で暮らしているわけではなく、まさに石炭の上に
暮らしている生き物なのです。
こういう話をするとみなさん、私たちは石炭の開発をやめさせたいと
考えていると思うようです。
でも、エネルギー資源の話は、「石炭」イコール「悪」
で済むような単純な話ではないのです。


ずっと「エコ」が叫ばれ、何かというと
「環境、環境」といわれるようになりました。
「脱炭素社会」も、よく耳にする言葉です。
でも私はこういう「いい」言葉に騙されてはいけない、
現実から逃げてはいけない
ということを強く訴えたいのです。


「脱炭素」ということで日本企業が手を引くというような
ニュースが流れると「よかったですね」と言われます。
でも実際は、そんなことではなにもよくはならないのです。
よくなるだろうとみなさんが思うだけで、
一度まわりはじめた開発の波を止めることは
想像以上に難しいことなのです。


まずはもっと事実を知り、それでも必要なものとは
何なのかということを
ひとりひとりが真剣に考えなくてはいけない。
そういう社会にならなければ当然ながらヒトにとって
資源は永遠に必要なもの、あればあるだけいいものなのです。
石炭がだめなら次は・・・という話では問題は解決しません。


オランウータンの森の窮境は、私たちの「便利」な生活を
支えるためにもたらされたものです。
でも、そのありがたみも感じないままに、
感謝することもなく「知らなかった」で
済ませてしまっているヒト。このように書くとヒトは
大変悪いことをしているようで、
なんだか居心地悪いですよね。でもホントのことなんです。


この苦い事実をあまり真剣に考えたくない。
「石炭」を使って「電気」を作っているなんてことは
なるべく考えないで、もっと「エコ」なエネルギーである
「自然エネルギー」なんてどう?「脱炭素」しようよ。
というような、作られた「居心地のいい話」ばかりが進んでしまう。
でも、ちょっと言い方が悪いかもしれませんが、
『これだけ利用しておいて不都合なことは
過去のことにして忘れよう』ではもっと悪いと思いませんか。
こんな無責任なことになったら、本当にヒトって
どうしようもない生き物になってしまいます。


もっともインドネシアにおいては脱炭素なんてことはなく、
石炭採掘は相変わらず続けられています。
たとえ今さら脱炭素と言っても、正直、現状のこの窮境は
何も解決されないでしょう。
一般の方たちの関心がそらされるだけで、
ますます事態が悪くなる可能性が大きいのです。
これはオランウータンの森の話だけではありません。
「自然を開発」するということの恐ろしさです。


2020年5月10日の時事通信のニュースで興味深いものがありました。
「アマゾン森林破壊が加速、1月ー4月は前年同期比55%増」
というものです。
世界の関心がコロナウィルスに集まり、
各国各地で人の出入りが制限されていますが、
実はかえってこうしたときにこそ現場では開発勢力が
急速に力を増すのではないか。
これは私たちがいま最も心配していることでもあります。
森のなかで木を切っている人には「三密」なんて関係のない話ですからね。
一度まわりはじめた開発の波を止めることは想像以上に難しいことなのです。


(次回へつづく)


オランウータン(0).jpg


プロフィール

鈴木晃(すずきあきら)
京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。
京都大学霊長類研究所を経て、
現在「日本・インドネシア・オランウータン保護調査委員会」代表。
(一社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)理事長。
1983年よりインドネシア、カリマンタン島にて野生のオランウータン
の研究を続ける。

鈴木南水子(すずきなみこ)
生後6か月よりウガンダに渡り、チンパンジーの研究をする父のかたわら、
アフリカの大自然の中で育つ。自然によって生かされているヒトの生き方
を求めて、オランウータンと熱帯雨林の保護の問題とその普及啓発活動に
取り組む。


(社)オランウータンと熱帯雨林の会(MOF)
(事務局)
〒162-0065
東京都新宿区吉町8-23 富井ビル2F
TEL 03-5363-0170
FAX 03-3353-8521

ホームページ http://moforangutan.web.fc2.com/
メールアドレス mof.orangutan@gmail.com



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