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第72回 偉大な写真家・星野道夫さんによるアラスカ生活と旅の至高の記録『イニュニック(生命)~アラスカの原野を旅する~』


みなさん、こんにちは!
にんげんクラブ世話人の川端淳司です。

早いもので1月ももう後半に入りましたね。

2015年は自分にとっても世界にとっても良き方向へ大変革の年だと感じています。

会社のデスクには、舩井幸雄さん自筆の『良いことの実現を確信しましょう』という
色紙と若きアーティスト佐藤未瑛さんの絵『春宵』を飾っているのですが、これから
冬を越え春に向け、そして、競争社会から共生のミロクの世へ向け、みなさんと共に
精進して行きたいと思います。


20150116.jpg

さて、連載第72回は偉大な写真家・星野道夫さんのアラスカでの生活と旅を記録した
イニュニック 生命―アラスカの原野を旅する』をご紹介いたします。
星野さんの心魂を揺さぶる素晴らしい写真は以下の公式HP等でぜひご欄くださいね。

星野道夫さんの公式HP



本書は1996年にTVの取材先のカムチャッカでヒグマに襲われ、43歳の若さで急逝した
星野さんが、1990年にアラスカに家を建ててから1993年までのアラスカの生活と旅を
記録した以下の随筆8編と写真、それに前回ブログでご紹介した柳田邦男さんの奥深い
解説で構成されています。


1.家を建て、薪を集める
2.雪、たくさんの言葉
3.カリブーの夏、海に帰るもの
4.ブルーベリーの枝を折ってはいけない
5.マッキンレーの思い出、生命のめぐりあい
6.満点の星、サケが森をつくる
7.ベーリング海の海
8.ハント・リバーを上って


アラスカでの生命がけの生活と旅を通して見た悠久の自然、友人たちの死と生、
それらが著者自身の人生観や死生観を交えて深く語られています。

ロシアで地元TV局の社長に餌付けされた不自然なヒグマになぜ襲われ凄惨な死を
とげねばならなかったのか。

文中の星野さんの『人間自身が持ち合わせた影』、『それぞれの人間が生まれ持つ、
どうしようもない命の力というものがある』という言葉が胸に突き刺さります。

文中から透徹した悟りに近い境地に至った星野さんの言葉をご紹介します。

心魂に響いた方はぜひ本書をご一読ください。


 

・風の感触は、なぜか、移ろいゆく人の一生の不確かさをほのめかす。
 思い煩うな、心のままに進め、と耳もとでささやくかのように・・・。

・私たちが何かを決める時、人の言葉ではなく、その時見た空の青さとか、
 何の関わりもない風景に励まされたり、勇気を与えられることがあるような気がする。

・浅い眠りのまま夜が明けた。湯を沸かし、熱いコーヒーで身体をほぐしてゆく。
 心臓が鼓動し、血の巡りを感じ、ただ生きているということに心が満たされることが
 あるのだなと思う。

・昔、山に逝った親友を荼毘に付しながら、夕暮れの空に舞う火の粉を不思議な気持ちで
 見つめていたのを思い出す。あの時もほんの僅かな灰しか残らなかった。
 生命とは一体どこからやって来て、どこへ行ってしまうものなのか。
 あらゆる生命は目に見えぬ糸でつながりながら、それは一つの同じ生命体なのだろうか。
 木も人もそこから生まれでる、その時その時の束の間の表現物に過ぎないのかもしれない。

・「世界の大多数の人間が、俺たちにとっては普通の暮らしからほど遠いところで
 生きているってことだ。アフリカの自然はものすごいスピードで消えつつある。」
 (モザンビークでの難民へ物資を運ぶ仕事からアラスカに戻った友人の言葉)

・自然発生する山火事こそが、アラスカの森の多様性をつくりだしている。

・一見静止した森も、実は長い時の流れの中で旅を続けている。
 ひとつの森は、常に次の森のための土壌を用意していった。

・この世の人のめぐりあいは、限りない不思議さに満ちている。

・僕は若くして死んだ幾人かの友人たちのことを考えていた。
 二十代でこの世を去る者、そして百歳まで生き続ける者・・・
 それぞれの人間が生まれ持つ、どうしようもない命の力というものがあるような気がした。

・きっと、自然とはそれ自身何の意味さえもたないものなのかもしれない。
 そして、そこに、何か意味を見出そうとするのが私たち人間なのだろうか。
 もしそうならば、ひたすら袋小路へと走り続ける人間の歴史には、
 誰が、どんな意味を与えようとしているのだろう。

・僕はいつの頃からか、歴史の長さを人の一生で考えるようになった。
 今、自分がここに在るということは、歴史のどの時代にも自分の分身がどこかに
 いたということだ。親からスタートして自分の分身が一列にずっと並んだなら、
 例えば二千年前の弥生時代の分身はわずか七、八十人先なのだ。振り返り、
 少し目をこらせばその男の顔をかすかに読み取ることだってできるだろう。
 僕たち人間の歴史とは、それほどついこの間の出来事なのだ。

・人の持つ運は日々の暮らしの中で変わってゆくものだという。
 それを左右するものは、その人間の、自分を取り囲むものに対する関わり方らしい。

・夜の世界は、否応なしに人間を謙虚にさせる。さまざまな生きもの、一本の木、森、
 そして風さえも魂をもって存在し、人間を見すえている。

・アラスカ原住民の言語は急速に消えつつあった。
 1867年、アメリカがロシアからアラスカを買い取って以来、怒涛のごとく白人が
 この土地にやって来た。やがて、アメリカがアラスカ原住民にとった同化政策の
 中心は言語の撲滅だった。

・人間の生き甲斐とは一体何なのだろう。たった一度のかけがえのない一生に、
 私たちが選ぶそれぞれの生き甲斐とは、何と他愛ないものなのだろう。
 そして、何と多様性に満ちたものなのか。

・全ての生命が動き続け、無窮の旅を続けている。
 一見静止した森も、そして星さえも、同じ場所に止まってはいない。

・なぜ310万(日本側)の人間が命を落とさねばならなかったのか、
 その答を見つけることはできない。人々は、どうしようもなく、時代と共に生きている。
 そして気の遠くなるような戦死者の数も、決して戦争の悲惨さを伝えてはこない。
 それを知るためには、死んでいった無名の人々のかけがえのない生涯と、
 残された者たちのそれからの戦後を、ひとつひとつたどる途上でしかわかり得ないのだろう。

・政治も、社会も、まるで何もなかったように変わってゆく。
 そして個人の夢や、人々の文化だけが、したたかに残ってゆく。

・「ヘレン、人生の中で一番大切なことって何?」。彼女は迷わず答えたものだ。
 「友だちだよ」と・・・。僕はこの言葉を一生忘れないと思う。

・Salmon make a forest. (サケが森をつくる)この土地の古いインディアンの諺を
 思い出していた。この森を流れる無数の川を上がってきたサケの大群は、
 やがて産卵を終え、その一生を閉じ、再び上流から戻って来る。
 サケの死骸は土壌にしみ込み、栄養を与え、森を育むのだという。
 その言葉が、今、実感としてわかる。

・もうすぐ二十世紀が終わろうとしている。きびしい時代が待っているだろう。
 進歩というものが内包する影に、私たちはやっと気付き始め、立ち尽くしている。
 なぜならば、それは人間自身がもちあわせた影だったのだから・・・
 種の始めがあれば、その終わりもあるというだけのことなのか。
 それとも私たち人間は何かの目的を背負わされている存在なのか。
 いつかその答えを知る時代が来るのかもしれない。
 (かつてシベリアとアラスカを繋いだ)ベーリンジアから聞こえてくるのは、
 人間の行方を示唆する声なのだ。霧の中で、あの美しい縫い針が語りかけてきたように。

・人はいつも自分の心を通して風景をみるように、
 僕のアラスカはそれらの人々(友たち)と無縁ではなかった。

・こんな野営が何ごとにも代え難く好きだった。
 幸福を感じる瞬間とは、ありふれていて、華々しさのない、
 たまゆらのようなものだった。

・「追い詰められたカリブーが、もう逃げられないとわかった時、
 まるで死を受容するかのように諦めてしまうことがあるんだ。
 あいつらは自分の生命がひとつの繋ぎに過ぎないことを知っているような気がする」
 (友人ニックの言葉)

・「ニック、オオカミは殺しのための殺しをすると思うかい?」
 僕は何年か前、早春のツンドラで見た、生まれたばかりのカリブーの子を
 次から次へと殺しながら走るオオカミの姿を思い出していた。
 「俺はあると思う。きっと、死はやつらにとって芸術なのさ。
 それは人間のもつ狭い善悪の世界の問題ではないんだ。
 そして、そのことは少しもオオカミの存在を低くするものではない。
 それがオオカミなんだ。・・・・」

・アラスカが変わって行くことや、人間の未来・・・・そんな話をしているときニックが言った。
 「クリアランス(アラスカ随一の本物の猟師)が今ここにいたら、
 俺たちのことを不思議な生きものを観察するような目で見るだろうな。
 クリアランスには考えられないんだ。なぜそんなことを心配するのかと。
 そしてその目は、徹底的に相手を見下した眼差しなんだ。なぜだかわかるか?・・・
 クリアランスは今に生きているからなんだよ。」

・アラスカを旅しながら感じることは、やはり世界は広いというあたりまえの思いです。
 さまざまな人々が、同じ時代を、そしてかけがえのない同じ一生を、
 多様な価値観の中で生きています。少しでも立ち止まることができれば、
 アラスカであれ日本であれ、きっとそこに見えてくる風景は同じなのでしょう。
 これからどんな旅が待っているのか、自分自身にもわかりません。
 が、どれだけ長い時間をひとつの土地で過ごそうと、まだすべては見ていないと言う
 心の白地図だけはいつまでも持ち続けたいものです。



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