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つい先日、拙著『超訳 霊界物語』の第2弾が太陽出版より発売になりました。
出口王仁三郎が書いた『霊界物語』のメインテーマは「言向け和す」(ことむけやわす)です。
昨年1月に発売された第1弾では、その「言向け和す」を中心に書きましたが、今年8月に
発売された第2弾では「宣伝使の身魂(みたま)磨きの旅」という視点から10篇以上の霊界
物語のエピソードを紹介しました。
『超訳 霊界物語〈2〉出口王仁三郎の「身魂磨き」実践書―一人旅するスサノオの宣伝使たち』
霊界物語には、主人公スサノオの手足となって活躍する宣伝使がたくさん出てきて、地球
上を旅しながら、悪を言向け和して行きます。
それは宣伝使自身の霊性向上(身魂磨き)の旅であり、そしてまた私たちの人生の旅路に
ほかなりません。
ライオンの親が千尋の谷に子どもを突き落とすような厳しい神の試練に、宣伝使はどう立ち
向かって行くのか、私なりの解釈で紹介しました。
スサノオが導く三五教(あなないきょう)の教えは奥が深く、たとえば「不言実行」と言っても、
ふだん私たちが使っている「不言実行」という意味とはまるで異なります。
しょせんは私が覚り得た程度のことしか書けませんが、皆さんの身魂磨きの旅に少しでも
お役に立てたら幸いです。
詳しくは本書をお読みくださいませ。
ちなみに表紙のデザインは、本書の最初の方に出てくる「天の浮橋」
(このブログの第11回で紹介しました)をイメージしてデザインしたそうです。
○ ○ ○
さて、前回は三五教の誕生シーン(第6巻)で、「無抵抗主義」のエピソードを紹介しました。
今回は第7巻、そして少し飛んで第12巻から、祝姫(はふりひめ)と蚊取別(かとりわけ)の
エピソードを紹介します。
これは実は『超訳 霊界物語〈2〉』の原稿に書いていたものなんですが、推敲の結果、削除
したものです。
宣伝使の旅路に起きた出来事なんですが、「身魂磨き」というのとはちょっと違うかな、
と思って削除しました。
しかし神の不思議な経綸、ということを感じさせるエピソードです。
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祝姫(はふりひめ)は三五教の美人宣伝使だ。第7巻で初登場する。
インドで宣伝中に、悪神ウラル彦の一派に捕まってしまったが、オノコロ島からやって来た
三五教の宣伝使・日の出神(ひのでのかみ)に救われる。
そして、日の出神と共に竜宮島(オーストラリア)、筑紫島(アフリカ)へと渡り、筑紫の国の
都で出会ったのが蚊取別(かとりわけ)だ。
蚊取別は外見も性格もかなりユニークである。
頭はハゲていて、ヒョウタン顔。酒が大好きで、自分の顔のようなヒョウタンをいくつも腰に
ブラ下げ、へっぴり腰で歩いている。かなり目立つキャラだ。
自分の顔を、蚊を叩き殺すようにピシャリ、ピシャリと手で叩くという変な癖があり、この癖の
ために大失態を演じている。
それは第4巻の常世会議(本ブログ第8回を参照)だ。
蚊取別は演壇に上がって演説を始めるが、一言しゃべってはピシャリと額を手で叩き、また
一言しゃべってはピシャリと叩く。
そしてつい調子に乗りすぎて、自分の鼻の頭を握りこぶしで思いっきり叩いてしまうのだ(笑)
蚊取別は目から火花が飛び出し、頭はクラクラ。壇上からドタンバタンと転落して、右腕の
肘を骨折。泣きベソをかきながら担架に担がれて退場する...という、まったくドジで三枚目の
キャラだ。
こんな蚊取別だが、なぜか美人宣伝使の祝姫と結婚することになる。
しかし祝姫は最初は蚊取別をゲジゲジのように嫌っていた。それがどうして結婚する羽目に
なってしまったのだろうか?
──二人の出会いは唐突だった。
祝姫は筑紫の都の町はずれで、酒を飲んで歌って騒いでいる蚊取別と遭遇する。
蚊取別は常世会議で失態してから常世城を追放され、妻子を捨ててウラル教の宣伝使となり、
世界を旅している。
腰を痛めた蚊取別は、祝姫に介抱してもらったことをきっかけに、祝姫に一目惚れし、恋に
落ちてしまうのだ。
祝姫はエルサレム(三五教の総本山がある)に向かって旅をすることになった。
その後を蚊取別がストーカーのように追ってくる。
そして地中海を渡る船の上で、蚊取別は祝姫へのサプライズを実行する。
大勢の船客が見ている前で、ありったけの想いをのせたラブソングを歌うのだ。
「おいらの恋は命がけ~♪」
と。
この歌声を聞いた祝姫は恥ずかしくて、穴があったら入りたい気持ちになった(笑)
イケメン好きの祝姫は、蛇よりもゲジゲジよりも嫌いなタイプの蚊取別に恋慕されて吐き気を
催すほどだった。
ところが同じ船に乗り合わせた先輩宣伝使の北光神(きたてるのかみ)は宣伝歌を歌い、
祝姫に対して驚くべき指導をする。
「蚊取別の燃え立つ想いを叶えてやれ。それが宣伝使としての世を救う役目だ」
そう教えられ、祝姫はガーンと強いショックを受けた。
何と、結婚してやれと言うのである。
美女の祝姫は今までに色んな男からプロポーズをされてきた。しかし世界は広い。
慌てなくても素晴らしい男性は他にも沢山いるだろう。立派な宣伝使になって、大きな功績を
挙げてからなら、どんなにいい男とでも結婚できるはずだ──そう思って、今まで求婚をすべて
断って来たのだ。
その結果、一番大嫌いなタイプの男と結婚する羽目になってしまった......。
これは高学歴・高収入・高容姿のキャリアウーマンによくいそうなパターンだ。
自分と釣り合う男を求め続けた結果、独身のまま年をとってしまう......。
祝姫は自分の頑固な心を振り捨てて、蚊取別と結婚することを決意した。
(以上、第7巻第47章)
不条理に思う方もいるだろうが、人を救うためには、こういうことをしなくてはいけない時もある
らしい。何とも宣伝使というのは辛い稼業だ。
さて、ドラマはこれだけでは終わらない。
強烈なサプライズ作戦によって祝姫との結婚を見事果たした蚊取別だが、今度は自ら祝姫を
離縁するのだ。
結婚したり離婚したり忙しい奴だが、いったいどういう理由が隠されているのだろうか?
夫婦となった蚊取別と祝姫は、各自別々に宣伝の旅に出た。三五教には「宣伝使は一人旅」と
いう教えがあり、たとえ夫婦であっても原則一人の旅をやらされる。
夫婦仲睦まじく二人三脚で......というわけにはいかないのだ。なかなか厳しいのである。
一人旅に出た祝姫は、白瀬川(ナイル川)の上流に棲む魔神を言向け和しに向かった。
しかし魔神にやられそうになり、危ないところをイホ(エジプト)の酋長・夏山彦に救われる。
祝姫は夏山彦の館で療養していると、夫の蚊取別が偶然そこを訪れた。
久しぶりの再会に涙ぐむ祝姫。
だが蚊取別は祝姫をグッと睨みつけた。
そして、
「今日限りお前を離縁する」
と厳然として言い渡す。
祝姫は──夏山彦と不義の関係があったと疑われたのかも?──と思い、泣いて潔白を訴えた。
しかし蚊取別は、意外な事実を語り始めた.........
──実は自分は常世会議で失態した蚊取別ではない。仮に蚊取別の姿に化けているが、
自分はある尊い神様の命令を受けて、宣伝使の養成に全力を注いでいる者だ。
祝姫と夫婦になったが、それは祝姫が他の男と結婚をしないようにするためである。
祝姫が本来結婚をすべき縁のある男=夏山彦と出会うまで、祝姫が誤って他の男にうつつを
抜かさないように、仮に自分が祝姫と結婚して、保護していたのである。
だから今日まで祝姫と肉体関係は結ばなかった。
祝姫よ、今日で私と離縁して、夏山彦と結婚しなさい──
(以上、第12巻第3~15章)
何ともまあ、不思議な神秘的な話である。
神様の経綸というのは実に深遠微妙だ。
この蚊取別(の偽者)は、実は天教山(富士山)の神霊、木花姫命(このはなひめのみこと)の
化身である。
木花姫命は三十三相に身を変じて現れる。人間や動物、妖魅など様々な姿に変身し、たとえば
悪っぽいキャラで現れて、宣伝使を批判したり、からかったり、時には殺そうとしたりする。
逆説的だが、そうやって人々を改心へと導き、より高次のステージへと進ませてあげるのだ。
そういう「トリックスター」としての役割を果たしているのが木花姫命だ。
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皆さんの身の回りにも、知らず知らずのうちにそういう役割を果たしている人が
いるかも知れませんね。