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見波利幸・著
ビジネス社 刊
1,000円(税込)
本著を手にして、「新型うつってなんだろう、今までのうつと何が違うのだろう」と思いました。
調べてみると、「非定型うつ」という立派な名前がありました。
仕事中はうつでも、プライベートになると元気になる20~30代の社会人が
ここ数年増えているそうです。
従来型のうつより軽度に分類されますが、とても大きな社会問題になっています。
休みの日は元気で、趣味にはやる気満々だったり、過食・過眠気味になったりと、
従来のうつとはまったく違う症状で、投薬よりもカウンセリングが重要です。
自分ではなく他人を責める傾向があることから「単なるワガママ病なのでは?」と
思われることも多いのが厄介なのだそうです。
プライドが高く褒められていないと気が済まない人や、
気が小さくて人の顔色ばかりうかがっている人、
そんな人が社会に出て初めて出会う場面で、ほんのちょっとしたことで
拒絶過敏症を引き起こしてしまうことが原因なのだそうです。
脳のメカニズムが違うのです。
著者は大手企業のメンタルヘルス研修の草分け的存在で、
数多くのカウンセリングをする中でこの状態に早くから気づき、
子供の頃の親子関係に着目して提唱していました。
そして、「社会人になってから不調にならないようにするために、
親が今、何をしたらいいのか」という多くの質問に答えて書かれたのが本著なのです。
著者自身が子育て真最中で、
本著に書かれている子供たちとのエピソードがとてもほほえましく、
その分実際のカウンセリングから見えてくる、親の接し方の大切さがよくわかります。
長い人生の中でうまくいかないことなど山ほどあります。
その時にどう対応できるか。
子供のストレス耐性を高めることができるのは親です。
慈しみの心を根底に持ち、子供に心から「ありがとう」と「ごめんなさい」が言えるか。
突き詰めていくと親自身の生き方を問われているのではないかと、
ひしひしと感じました。
親でなくても自分の生き方を見つめ直さずにはいられない一冊です。
ぜひお読みください。
(編集室 柴切純子)