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浜田宏一(著)
価格:1,680円
発刊日:2013年1月
出版社:講談社
イェール大学名誉教授である著者は東大教授であった時に日銀の白川方明総裁の先生でした。
白川総裁はとても優秀で聡明な学生であったことをよく覚えているし、日銀に入行した後留学
したシカゴ大学の大学院の教授も白川総裁の優秀さには太鼓判を押していることを紹介してい
ます。
しかし、著者は現在の白川総裁はいわゆる「日銀流理論」に毒されてしまって、学生時代に
学んだ正当な経済学の知識をないがしろにしていることを指弾している本になっています。
本書は安倍総理が進めているアベノミクスの考え方の基本となっている理論を解説している
本であり、FRBのバーナンキ議長を筆頭とする量的緩和を徹底的に進めることが唯一の
問題の解決策だという説の理論的な説明をしている本です。バーナンキ議長はヘリコプター・
ベンと呼ばれていて、ヘリコプターでお札を撒き散らす如くにお金を刷りまくるのが大恐慌に
陥らないための方法だという学説を大恐慌の研究をして結論づけているのです。
だから、断固として量的緩和をすすめアメリカ経済を引っ張っていこうという強い意志を示して
いるのです。民主党政権下では白川総裁の日銀はその流れに取り残されない程度には世界
経済の潮流について行きながらも、本音では伝統的な中央銀行の考え方である紀律を重んじて、
ハイパーインフレに繋がるようなことをなるべく手を出さない方針を貫いていました。
しかし、経済を動かすという面では格段に影響力が強い自民党政権に対しては、その抵抗を
諦め、世界の潮流に積極的に参加することを決めたように思われます。昨年の2月14日に
行われたいわゆるバレンタインデーショックの時は、日銀の姿勢が中途半端であることをすぐ
にマーケットに見ぬかれたのですが、もう間もなく行なうであろう次回の緩和の時は本気を
示すのではないかと思われます。
個人的な意見では、実は際限のない量的緩和はやがて地獄へ突き進むしかないという朝倉慶
先生の考えに近いものを感じており、野田政権下の日銀の対応に実はシンパシーを感じていた
のですが、やはりこれ以上日本だけが痛い目に合い続けることはできないという安倍総理の
メッセージも理解できる気がします。
しかし、これで日本もアメリカと同じように危うい世界に突入することは間違いない事実だと思い
ますので、他人のせいにしないで自分たちの力で未来を何としても切り開くという強い意志が
ますます大事になってくるのは間違いないと思います。
アベノミクスの本質を知りたいと思う方にはぜひお薦めしたい1冊です。
(船井勝仁ドットコムより)