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猛暑の経済効果


 九州から東海地方までの梅雨明けが7月18日に発表されました。テレビの
ニュースを見ていると今年は猛暑になるようです。東京でもゲリラ豪雨があり、
このような天気の年は猛暑になるケースが多いように記憶しています。

 猛暑になるとビールが売れる、エアコンが売れるということになり、経済効
果は大きいようです。7月から9月の平均気温が1度上がると経済効果はG
DPを0.8%増加させるそうで、これは、夏は暑く冬は寒い方が、モノがよく売
れるという経験則から言っても納得できるものです。

 このように自然の営みは、私たちの生活に大きな影響を与えているのです
が、都会生活をしている私のような人間は、お金を支払うことによってともす
れば自然のリズムを忘れて生活をしているのかもしれません。

 それよりも、人間の集合意識が作り上げる現実に大きく左右されながら生
きているというのが実態に近いように思えます。例えば、イギリスのEU離脱
を選んだ国民投票やトルコのクーデター未遂などの影響のほうが、猛暑の
影響よりも私の生活には大きな影響を与える実感があるのです。

 どちらもヨーロッパの安全保障の要であったEUという制度を大きく揺さぶ
るものになりました。ヨーロッパは1618年~1648年の三十年戦争という宗
教戦争で、いまのドイツの地域の人口が半分になるなど悲惨な戦争を体験
しました。その反省から地域の人口が半減してしまうというような悲惨な状
態を防ぐために、1648年にヴェストファーレン和平条約が結ばれて、今日
に至るまでの世界和平を実現するための基本的な枠組みの基本が完成し
たのです。

 ちょっと難しい内容になりますが、いまでも世界を動かしている93歳のヘ
ンリー・キッシンジャー氏の2014年にオリジナルが出版された『国際秩序
(日本経済新聞出版社)からヴェストファーレン条約の意義の部分を引用さ
せていただきます。


 
(引用開始)

 ヴェストファーレン和平条約は、そこに盛り込まれた要素が複雑ではなく、
包括的であったために、国家の歴史の転換点になった。帝国、王国、宗教
的権威ではなく、国家がヨーロッパの秩序の基礎単位であることが確認され、
国家の主権という概念が、そこで確立した。加盟国がそれぞれの国内体制
と国教を選ぶ権利について内政干渉されないことが確認されるいっぽうで、
少数宗派が自分たちの信仰を平和に実践し、強制的に改宗させられないよ
うにするという、斬新な条項も付け加えられた。ヨーロッパ大陸での全面戦
争が再発するのを防ぎたいという共通の思いが動機になり、当時の喫緊の
要求を超えて、「国際関係」のシステムの原理が整いはじめた。国と国の関
係を規制し、平和維持の術策を向上させるために、加盟国の首都に常駐の
代表を配置する(それまではヴェネツィアにしか例がない慣行)ことも含めた
外交の枠組みが設計された。争議が紛争に発展する前に調停するための
公開討論の場として、当事者たちはヴェストファーレンを会議や審議会のモ
デルにすることを構想した。戦争中にヨーロッパを転々としたフーゴー・グロ
ティウスのような学者や顧問によって発展した国際法は、調和をはぐくむこ
とを目的として合意を得た、拡大可能な教理の母体と見なされた。ヴェスト
ファーレン条約が、その精神的な核だった。

(引用終了)


 これを見ると現在の外交システムや国家主権という考え方や、内政干渉を
してはいけないという基本ルールがこの時にできたことが分かります。そして、
EUに至るまでのヨーロッパの政治外交システムはこの考え方の上に発展し
てきたのですが、最近の動きを見ているとどうもこのシステムが破たんする
方向に進み始めているような気がしてなりません。そしてこのことは、すなわ
ち500年近くにわたって世界を動かしてきた仕組みに変わるものが必要とさ
れているのかもしれないということなのです。

 日本人は自ら血を流して、憲法を中心にして為政者が好き勝手できないよ
うにしてきた民主主義の基本精神や、皆殺しに近いような悲惨な戦争を繰り
返さないために作られた現在の政治外交システムの基本概念を、肚で理解
することができていません。そういう意味においては、日本には民主主義も
資本主義も定着しているとは本当の意味では言えないのかもしれません。

 理解する前にその仕組みが終わってしまう時を迎えつつあるような、そんな
妄想を、猛暑の夏にエアコンの効いた快適な自宅で読書をしながら膨らませ
ています。世界中が政治の季節に突入している中で、移民の問題もほとんど
なく、経済格差も諸外国に比べれば深刻ではない日本は、一人平穏無事な
夏を迎えているのかもしれません。

 でも、グローバル化した世界はつながっていて、私たちの生活は遠くヨーロッ
パや中東で起こったことにすぐに影響を受けるようになっています。

 猛暑の夏に、経済効果があるというありがたみに感謝しつつ、そんな妄想を
膨らませることもしっかり楽しんでいきたいと思っています。



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