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水木しげるさんの描く世界

にんげんクラブの皆様こんにちは。ドイツ在住のこだまゆうこです。

日本では、運動会などの行事が終わり、秋の日々を楽しんでおられるかと思います。
こちらドイツでは、最近はダウンコートを着るほどの寒さです。(ドイツ人の方はもう少し
薄手のコートですが・笑)

ドイツの紅葉はどんな美しさかしら?と楽しみにしていたのですが、せいぜい葉が
黄色くなる程度で、あまり美しい紅葉にはお目にかかっていません。
やっぱり紅葉は京都だわ、などと日本を懐かしく思っています。
 
 
さて今回は、ドイツレポート、というタイトルからはかけ離れているのですが、
漫画家の水木しげるさんについてのレポートを書かせていただきたいと思います。

水木しげるさんというと、漫画「ゲゲゲの鬼太郎」はとても有名ですね。
最近ではNHKドラマで水木さんの奥様が書かれた「ゲゲゲの女房」が大人気だったと聞いています。
日本でも今大ブームとなっているのに、わざわざドイツにいる私が水木さんのことを書くのは
なんだか妙な気もしますが、ご参考までにお読みいただければ幸いです。


数学者の岡潔さんなど、昔の世代の人の多くは、「漫画はよくない、人間の質を落とす」、
というようなことを書籍に書かれていることがあります。
確かにそれも一理ありますが、手塚治虫さんや、水木しげるさんなど、芸術作品のように
優れた漫画を描かれる人も、やはりいらっしゃいます。

文章を書く仕事をしているのにこんなことを言うと怒られてしまいそうですが、個人的には、
漫画のほうが本よりも好きです。作品の質にもよりますが、私の脳にとっては、漫画のほうが
読みやすく、頭に記憶しやすいからです。

時として漫画は本に比べるとイメージをふくらませる能力を退化させるようにも思います。
しかし、描き手のイメージ力や技能が優れていれば、それはとても良いものになると思います。
 
 
以前に、手塚治虫さんについて書かれたある文章を読んだ際に「生前手塚さんは、
水木しげるさんにものすごくライバル心を燃やしていた時期があった」と書かれていました。

これを読んだときは、私自身は水木さんの作品を「ゲゲゲの鬼太郎」しか知らなかったために
なんだか怖いイメージしかなく、「なんで手塚治虫さんほどの巨匠が水木さんにライバル心を
燃やすのだろう?そもそも「火の鳥」や「ブッダ」などの作品と、妖怪物の水木さんとでは、
全然ジャンルが違うのに。妖怪のほうが子どもに人気があるからかな。」などと思っておりました。

しかし、今回「ゲゲゲの女房」が評判になったということで、少し水木しげるさんの漫画を
読んでみようかな・・・・という気持ちになり、調べてみると水木さんは優れた作品を
とてもたくさん描かれていることが、ようやくわかりました。
 
また、テレビアニメしか見ていなかったのでわかりませんでしたが、水木さんが漫画に
描かれる背景は、写真のように手の込んだ美しいもので、美的にもすごい才能を
お持ちだということがわかりました。
 
 
水木さんは、戦争時代に南方の島ラバウルに召集され、爆撃にあい片腕を失います。
命からがら日本に帰還するも、紙芝居屋、貸本漫画家などを経て飢え死にしそうなほどの
極貧生活を送ります。その後に漫画家として人気が出てからも、漫画と現実の区別が
つかなくなるほどに、休む暇なく漫画を描き続けます。

そのように過酷な体験をされてきた水木さんの描く戦争についての漫画は、臨場感、
現実味があり、ヒーローが登場しません。極限の状態の中では、みんな、人間らしくて、
醜く、弱い部分を持っており、そしてあっけなく死んでしまいます。
 
それが、実際の戦争の現実なのだと思います。そのような実体験のある水木さん作品は、
どなたの戦争漫画よりも優れていると思います。

多くの漫画を描かれている水木さんの作品の中で戦記ものはまた別格だとは思いますが、
個人的に特に興味深いのは、見えない世界について描かれているものです。

妖怪や見えない世界などに幼少期から興味のある水木さんは、スウェーデンボルグや、
南方熊楠、出口王仁三郎、コナン・ドイル、日本の僧の明恵など、見えない世界がわかり、
いわゆる霊感のあった天才たちについて、多くの伝記ものを描かれています。
(『神秘家列伝』というタイトルです)
 
漫画という読みやすい形態で、水木さんの感性によって見えないものを描かれていると、
「そんなこともあるかもしれないな」という気持ちに気楽にさせるので不思議です。

また、お年を召されてからも、妖怪研究の大家として、世界中の国々を訪れ、
様々な怪奇現象(いわゆるビックリ現象)を精力的に取材されています。
 
水木さんによると、日本の昔話などに出てくる妖怪と同じ種類の妖怪が、確かに海外にも
共通しているようです。マレーシアのジャングルなどで日本の妖怪を知らない人に
水木さんの妖怪のイラストを見せると「この妖怪は知っている」と言う人が何人もいるのだそうです。

すっかり水木さんの作品に魅了されてしまった私は、この一週間ほどで水木さんの描かれた
作品をいくつか読みました。

中でもご自身の自伝である上、中、下三巻の「水木しげる伝」はかなり読みごたえがありました。
 
 
多くの経験をされてきた水木さんですが、読んでみて最も印象に残った不思議な
エピソードをひとつだけご紹介いたします。
  
それは、戦後30年近くたった頃、水木さんはかつての戦友とひょんなことから出会い、
その後に意気投合して、戦友三人で自分たちが戦ってきた地ラバウルを訪れたときの話です。
 
現地につくと、戦死者たちの骨や水筒などの遺品が、そこら中にそのままにされていました。
その日は遅かったのでひとまず寝ると、偶然(?)にも、三人は同じ夢を見ます。
 
その夢とは、亡くなった戦友たちが「22、3で命を亡くして、誰かこないかと三十年近くも
待っていた自分たちの気持ちがわかるか」と訴えかけてくる夢でした。
三人が同時にまったく同じ夢を見ていたとは、偶然にしても出来すぎです。

あくる日、落ちていた遺骨や遺品を集め、一箇所に埋めてお酒をかけて供養すると、
いずこからともなく、おびただしい数の蝶がとんできてその塚にとまったそうです。
蝶は酒が好きなのか、という考えもよぎったそうですが、あの蝶は絶対に戦死者たちの霊だった
・・・・と水木さんは確信されたそうです。

もともと普通の人より霊感の強い水木さんですが、このせつないエピソードが、
私には印象に残りました。(おそらくこの現象は、霊感が強い、弱いに関係なく
起こった現象でしょうけれど。)
 
 
水木さんの多くの作品に共通していることは、「戦争は二度とあってはならない」という強い訴えと、
「世の中には、目にみえない存在がいますよ」ということを、教えてくれていることです。

水木しげるさんは今年で88歳。現在もお元気なようです。
戦争を体験し、一本の腕で人の何倍も働いてこられた水木さんの生き方からは、
まだまだ多くのことを学べると思いました。

今さら私に教えられなくとも、すでに水木さんの作品は読まれている方が多いかもしれませんが、
まだお読みでない方は、ぜひ読まれてみてはいかがでしょうか。
 
 
 
101021_1.JPG
(写真は妖怪・・・・ではないかもしれませんが、アーヘン大聖堂の塔の中にいた
 怪物をかたどった彫刻「ガーゴイル」です。)
 
 
101021_2.JPG
(こちらは、コブレンツという町にあった魔女のお店。閉まっていたので何が
 売られていたのかはわかりません。)
 
 
101021_3.JPG
(この写真は以前にも紹介しましたが、魔女や妖精?の人形です。
 水木さんの描く妖怪が、あんがいひょうきんものが多いように、
 こちらの魔女は見た目はこわいですが、飾っていると幸せを運んでくるのだそうです^^)



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