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追悼と祈り

にんげんクラブの皆様、こんにちは。

リヨンは穏やかで暖かい天気が続いています。

13日の金曜日にパリで同時多発テロがあった為、リヨンは大丈夫なのかと
方々から連絡を頂きました。

事件直後は国境が閉鎖され、パリの市民は外出しないように勧告されていました。
パリからボルドーに移動していた友人の話では、車の規制はさほど厳しくなかった
そうです。飛行機も通常どおり運行していました。

外出を控えていたパリ市民ですが、事件2日後からは多くの人が日常生活を取り
戻そうとしています。

テロを恐れることなく日常生活を送ろうと思う一方で、一般市民の来る巷のレスト
ランやスタジアム、コンサート会場を襲ったテロの恐怖は深く市民の心につき刺
さっているようです。

銃撃のあった場所に追悼のろうそくや花束を捧げに来る人々が、何かの破裂音を
銃の音と勘違いして皆が一目散に走りだす、という場面もテレビ放映されました。

テロ銃撃犯たちは爆薬付きベストを着用、数人が一般市民を巻き添えにして自爆
しました。
この銃撃と自爆テロにより亡くなった方は129人に登り、負傷者は350人近くと
みられています。多くの人が大切な家族や友人を失いました。

犠牲者を悼みフランス全土で16日の正午に黙祷が捧げられ、リヨンでは、15日
から17日まで芸術、スポーツ関係の催し物を自粛しました。


1124-1.jpg
(テロの犠牲者を悼みフランス国旗の3色にライトアップされた裁判所(リヨン))


オランド仏大統領は、このテロがイスラム過激派ISIL(イラク・レバントのイスラム
国)により実施されたとして発表し、フランス全土における緊急事態を宣言。
フランスは「戦争状態である」として、テロ掃討にシリアへ戦闘機を搭載した空母を
出撃させることにしましたが、空爆によるIS掃討は今までも試みたものの壊滅させ
ることはできずに今に至っています。
空爆では解決の道が見えてこないように思えます。

1124-2.jpg
(シリアに出撃する空母に搭載されたフランスの戦闘機「ラファル」)


テロリストの一人がシリアからの難民として入国していたということで、難民受け
入れを渋る人々が増えました。

Kamikaze

週末のテレビ番組はほとんどテロについての特番ばかりだったのですが、
Kamikaze(フランス読みで「カミカズ」)という言葉を何回聞いたかわかりません。

フランス人にとってこの言葉は外来語であり、本来の「神風」の意味や「神風
特攻隊」については詳しく知らない人の方が多いと思います。ヨーロッパにお
いて「Kamikaze」という言葉は、「自爆攻撃」という意味で使用されますが、
倒そうとしている相手が戦争における敵軍であるのか一般市民であるのかで
言い方が変わるわけではありません。

「Kamikazeはサッカースタジアム入場券を入手していた」というふうに、自爆
テロ犯のことを指して使われることが多いのです。

外来語を本来の意味から広義に解釈して用いることは、どこの国でもあること
ですが、報道中この言葉が毎回繰り返されるため、日本人の私にとっては耳
障りでした。


光の祭典

リヨンでは来月の5日から8日まで恒例の光の祭典が企画されていましたが、
今回のテロを受けて、内容が大幅に変更されました。

光の祭典は、リヨンの街が3Dマッピッングなどによるイルミネーションでライト
アップされ、毎年3百万人近くの人出で賑わう、リヨンの一大行事です。

残念なことに、今年は準備していた大掛かりな光のショーをすべて2016年の
12月まで延期することに。
「市民がテロの標的になる危険性があるため祭典はできない」という市長の
判断でした。

1124-3.jpg
(11月20日のメトロ新聞より
「光の祭典は中止。12月8日はテロの犠牲者追悼へ。」)


その代わり、12月8日にだけ、テロの犠牲者を悼み市民が各家の窓にろうそく
を灯すこととなりました。20万本の小さなガラスのコップに入ったろうそくが準備
され、子供達には無料で配布されるそうです。

1124-4.jpg
(12月8日に各家庭の窓を灯すため、20万個の小さなガラスコップに入った
ろうそくが用意されます。)

市民が各家の窓にろうそくを灯すというのは、リヨンの本来の光の祭典の姿
でもあります。1852年の12月8日に各家の窓にろうそくを灯して、フルヴィ
エールの丘の上のマリア像の完成を祝い、リヨンを守る聖母マリアに感謝した
のがこの祭典の始まりですから。

昨年度の光の祭典の様子はこのサイトから見ることができます。

http://www.fetedeslumieres.lyon.fr/fr/edition/edition-2014


光と音

フランス中が喪に服した3日間の間に息子は14歳の誕生日を迎えました。

先週の土曜日に、息子はリヨン織物芸術博物館での学生コンサートでチェン
バロを弾きました。パリでテロのあった翌日ですが、その日はまだリヨンでコン
サート自粛が勧告されておらず、追悼の意味を込めて開催されました。
コンサートが日曜日だったら中止されていたでしょう。
学生コンサートの後、チェンバロの先生による博物館所蔵の18世紀初頭に
制作されたチェンバロの演奏がありました。


1124-5.jpg
(リヨン織物芸術博物館内にある、1716年に制作されたPierre Donzelague
(ピエール・ドンゼラーグ)のチェンバロ。)


コンサート後、息子はこの歴史的チェンバロを少し弾かせてもらうことができ
ました。この楽器が制作された18世紀初頭には、ちょうど作曲家ラモーが
リヨンに滞在しており、もしかしたらラモーもこのチェンバロを弾いたかもしれ
ません。

息子は、ちょっと弾き始めて、驚いたように鍵盤から手を離しました。その後
すこし緊張して、何かを確かめるように鍵盤をそっと触っていました。

私が後で「なんで曲を弾かないの?  楽譜がないから忘れちゃったの? 」と
尋ねると、「音を鳴らした瞬間鍵盤がすごく熱かったんだよ。ブワーッと熱が手に
伝わってきたんだよ。」と興奮気味に語っていました。歴代の名チェンバリストが
演奏してきた名器ですから、相当なエネルギーが宿っていたのでしょう。

昔の楽器は、いま生きる私たちに古の響きを蘇らせてくれます。
私たちは今も昔も、音に癒され、祈りの火を灯してきました。

13日のパリのテロから一週間が経ち、3日間自粛していた芸術イベントも再開
され、再び街のあちこちで素敵な音楽に巡り会えるようになりました。

12月8日は、リヨン中の家の窓に小さな祈りの火が灯ります。

2016年度に持ち越された光の祭典。
来年のフランスは、このイベントが安心して開催できるようになっていてほしい
ものです。

亡くなった方々のご冥福を祈ります。
そして負傷された方々が1日も早く回復されますように。

リサ 11月20日 リヨンにて



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