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第71回 生きる(或いは死を全うする)力足りうる示唆に富んだ多くの言葉に出会える柳田邦男さんの傑作エッセイ集『言葉の力 生きる力』


みなさま、

明けましておめでとうございます。
にんげんクラブ世話人の川端淳司です。

良い新年を迎えられたことと存じます。
本年もこの『つれづれ読書録』でおつきあいの程、どうぞよろしくお願いいたします。

大阪では1月4日の新年早々に飯塚弘明さんと舩井勝仁さんの講演&交流会があり、
にんげんクラブに何かしらご縁のある素敵な方々と楽しい時を過ごすことができました。


新年会.jpg

講演者お二人とのご縁を振り返ってみると、
東京のフロンティアショップで開催されていた勝仁さんの勝塾に何度も通ったこと、
飯塚さんには行きつけだった四谷荒木町の美舟で
霊界物語の神髄『言向け和す』の講演をして頂いたことを懐かしく想い出し、
必然・必要・最善の出会いに感謝の気持ちが溢れてきました。

勝仁さん、飯塚さんを始め、企画頂いた大阪支部代表の小原正年さん、
勝仁さんと共に大阪までかけつけて頂いた事務局の家田さん、
司会の大空さんに改めて感謝申し上げます。

また、長年の舩井幸雄会長のファンで交流会に初めて参加された方を筆頭に
新しい出会いがあり、支部や組織の枠を超えての嬉しい再会もあり、
2015年という素晴らしい時代の幕開けを感じることができました。
この勢いにのって、みなさんと共にミロクの世への気づきと行動を
実践して参りたいと思います。

さて、新年1回目となる連載第71回は柳田邦男さんの『言葉の力、生きる力』を
ご紹介いたします。

戦後のノンフィクションの地平を切り拓かれた柳田邦男さんですが、
私は本書により、この表紙を飾る今は亡き偉大な写真家・星野道夫さんに
7年程前に出会えました。
今読み返してみると、辺見庸さんと同じく時代が必要としている
偉大な日本人作家であることが分ります。

上述の星野さん以外に、モーツァルト、中原中也を始めとする芸術家や、
闘病記・絵本などから引用された心に響く言葉、
そして自死という形で息子さんを失くされた経験を持つ柳田さんご自身の
示唆に富む力ある言葉が多数紹介されており、
生と死について深く感じる、或いは熟考するきかっけを与えてくれる
非常に優れたエッセイ集です。

文中から個人的に印象に残る所を以下にご紹介しますので、
感じる所があればぜひ本書をご一読頂ください。
きっとご自身に必然・必要・最善な言葉に廻り会えると思います。
なぜなら、柳田邦男さんご自身がシンクロニシティ溢れる素晴らしい魂の
日本人なのですから。


~以下、文中より抜粋~

・私の頭には、言葉にいのちの響きを取り戻さなければという意識が
 はたらいていた。言葉の危機は、心の危機であり、文化の危機だ。

・日本画家の高山辰男氏は驚くべきことに、5、6歳の頃に友人の家で見た、
 郷里出身の田能村竹田の掛軸の墨絵をはっきりと脳みそに刻んでいて、
 それが僕の表現手段としての日本画の一番のよりどころになっていると語る。
 やがて東京美術学校に入り、松岡映久の『伊香保の沼』を見て、
 人間の本質的な淋しさのようなものにうたれ、川合玉堂の『竹生島』の前で、
 ただ呆然として、涙を流したという。

・星野道夫氏の言葉は、すでに神話的普遍性に到達している。
 星野氏が様々な大自然の中のシーンに遭遇し、魂をゆさぶられるうちに、
 肉体の深部から湧き出てきたにちがいない言葉だ。
 「気がついたんだ おれたちに 同じ時間が 流れていることに」
 (表紙の写真に添えられた言葉)

・写真がシーンの発見であるように、言葉は思索の発見である。
 星野氏にとって、写真と言葉はそれぞれに独立した不可欠の表現手段で
 あると同時に、共鳴し合いそれぞれの意味づけを二乗倍深め合う
 表現手段だったのだ。

・星野氏が引用したカリブエスキモーのシャーマンの言葉が頭に残る。
 「唯一の正しい知恵は、人類から遥か遠く離れた大いなる孤独の中に
 住んでおり、人は苦しみを通じてのみそこに辿り着くことができる。」

・私は気づいた。星野氏のアラスカでの写真は、えもいわれぬ音を捉えているのだ。
 はっきり識別できる音はもとより、情景の奥底から伝わってくるささやきとも
 感じられる不思議な音が惻々と伝わってくるのだ。
 マーラーの交響曲第三番を聴くと、天使たちの深い愛のささやきや
 天上の音楽までをも聴き分けていたに違いないと思わざるを得ない。
 星野氏の場合は目で霊感的にそういう自然界のポリフォニー(多声音楽)な
 ささやき、ざわめき、響きの神秘を聴きとっていたに違いない。

・私の発想の原型を探ると、小学生時代に数々の少年少女物語を読み漁って、
 (父のいない)心の飢えを満たしていた日々が浮かんでくる。
 結局、人間が生涯に為すことは、幼少期に用意されているという仮説は
 真理なのだろう。これからの私の作品は(ノンフィクションと云えど)、より濃厚に
 物語性や魂の問題を含む神話的語り口を取り入れたものに変わって行くだろう。

・人が本からどれだけのものを読み取るかは、
 その人の人生経験や内面の成熟にかかわっている。

・大事なことは、幼い者の感覚は、その時は言語化できなくても、非常に確かだと
 いう点だ。鋭い感受性で最も本質的な部分を感じ取っており、幼い者の世界には、
 大人の世界よりも、もっと重大な、しかも本質的意味を具えた事件が
 たくさん起こっている。

・掟に満ちた社会に入ろうとしても入れない心を病む若者や弱者。
 豊かな時代になってのカフカの評価の高まりは、競争と合理主義が尖鋭化する
 中での人間疎外の大量生産という現実を背景にしている。

・「死は、厳密にとれば、ぼくらの生の本当の最終目標なのですから、ぼくは
 この数年来、この人間の真実で最上の友人ととても仲良しになってしまったので、
 死の姿を少しも恐ろしいと思わないどころか、むしろ大いに心を安め
 慰めてくれるものと考えているくらいです。」
 (モーツァルト31歳の時、病床の父に宛てた手紙より)

・重度心身障害児の子どもたちは、ボランティアの演奏するモーツァルトを
 聴きながら、雲上の人のような穏やかな表情になって目を輝かせ、頬を濡らす
 顔さえあった。魂が共鳴し合っている。私はほんとうにそう感じた。

・「のろくてもいいじゃないか 新しい雪の上を歩くようなもの ゆっくり歩めば 
 足跡が きれいに残る」(詩画家星野富弘氏)

・「飛ぶことができるのは、心の底からそうしたいと願った者が、
 全力で挑戦したときだけだ。」(絵本・カモメに飛ぶことを教えた猫より)

・ゴッホの迫るような緑に圧倒された。自分も表現に身を捧ぐべきことを改めて思った。
 学者としての道の閉ざされている事はむしろ有難いことなのだ。
 その暗示を素直に受け入れねばならない。
 お使いの途中、いちょうのまばゆいばかりの王者のごとき姿を仰いで、
 あの樹一本をゴッホの様に描き出せたら、もうそれで死んでもいいのだな、と思った。
 生きているイミというのは要するに
 一人の人間の精神が感じとるものの中にのみあるのではないか。
 (戦時中の東大病院精神科を支えた3人の医師の一人でありエッセイストの
 神谷美恵子氏の日記より)

・他人の痛みを理解できても、自分の力ではどうしてやることもできないで、
 ただ涙を流す。そういう感情を悲と言う。(作家五木寛之氏)

・目に入るものすべてが輝いて神々しく見えるという体験は、
 がんの告知や再発の告知を受けた人や、逆に重体に陥った後に生還し
 退院することができた人などの手記に、時折見かける。
 私自身、脳死状態の息子と言葉にならない会話を繰り広げているうちに、
 ふと窓の外を見ると、庭の大きな欅の繁った青葉や遠くの丘陵の家々が、
 燦然と輝いて見え、不思議な感覚にとらわれたことがある。

・生から死へのポイントを通過するとき、決して陰惨ではなく、
 ふるさとへ還りゆくような自然さを垣間見ることができていた。
 (作家重兼芳子氏)

・日本の高度成長期以降の歴史は、大人の世界でも子供の世界でも、
 「明るく、楽しく、強く」「泣くな、頑張れ」ばかりが強調され、
 「悲しみ」あるいは「悲しみの涙」を排除し封印してきた歴史ではなかったか。

・悲しみの感情や涙は、実は心を耕し、他者への理解を深め、
 すがすがしく明日を生きるエネルギー源となるものなのだと、
 私は様々な出会いのなかで感じる。

・ハルエさんはアトリエで倒れた夫を看取った瞬間、
 「主人の魂がからだの中にすっと入ってきたんです」という。
 このような看取りは在宅ケアでなければ経験することはできなかったに違いない。
 在宅ホスピスケアは、家族にとっては苦労の多い大変なことであっても、
 それが可能になれば、死にゆく人にとっても、
 残されたもののグリーフワークのためにも、非常に実りの大きいものである。

・医療者の必死の取り組みと家族のひたむきな愛は、相互に響き合う関係にある。

・不思議なことに傾聴の訪問を繰り返すうちに、
 病む人は自分の人生を受け容れ、心が穏やかになっていくことが多いという。

・欲望を満たすために限りなき経済成長を求める人間行動が、
 地球環境を侵食するだけではとどまらずに、
 自らの感性、自らの内面までも荒廃させている。

・百年単位での人間と世界の行方を決めるような価値観の大転換、
 つまり、新しい「知」の枠組みの創造が、いまこそ求められている。

・西洋文明は人間の欲望を解放し、その欲望にそって自然を収奪し、
 世界を人工物であふれさせてきた。
 その結果、人間の安全を脅かすものは文明のイデオロギーが称揚してきた
 「人間」そのものであることがあぶり出されてくる。

・核燃料精製工程の中で、放射性物質を手作業のバケツで移し換える手順を
 実施していたという杜撰さを、どう理解したらよいのか。

・死んだ息子を居間に安置したその時、息子が傾倒していたロシアの亡命映画作家
 タルコフスキーの『サクリファイス』のラストシーンがTVに映り、
 バッハのマタイ受難曲のアリア「憐れみ給え、わが神よ」が部屋一杯に流れ出した。
 私はただ立ちすくみ、人知の及ばない大いなる存在を思わせる不思議な偶然に
 圧倒されるだけだった。
 しかし、歳月を経て、送られてきた息子の学生手帳の写真に再会した瞬間に、
 息子が好きだった『スノーマン』の主題曲がCDから流れてきた時には、
 涙を流しながらも、息子は大きなあたたかい恩寵に浴しているに違いないと、
 やすらぎを感じるようになっていた。
 息子の死が時間をかけて私にそういう内面の成熟をうながしたのだろう。
 愛する者の死がもたらすものは、ネガティブなものだけではない。
 物凄くポジティブなものももたらしてくれるのだ。

・私の心には自分の境遇を幸福か不幸かという次元で色分けする観念も意識もない。
 あるのは、内面の成熟か未熟かという意識だ。
 そして、内面において様々な未成熟な部分があっても、あせることなく、
 人生の終点に到達する頃に、少しでも成熟度を増していればよしとしよう。



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